Ver.黒曜・リング編
□終わりの始まり
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紗那「私は、そのリーチェって人を何とかしようと・・・」
リーチェ「今の最優先事項は風花未来の抹殺です。他の者達を一掃することはその次です」
未来「って、言われてるけど?(笑」
紗那「そ、それでもっ!」
リーチェ「邪魔をする、というなら先にあなたを殺すことになりますが?」
紗那「殺されたくはないけど・・・それでいいよ。だって、先にあなたと戦ってたのは未来じゃなくて私の方でしょ?」
リーチェ「・・・いいでしょう。すぐに楽に逝かせてあげます」
ゴッ!!とリーチェが床を蹴って飛び出す。
標的は勿論、
紗那「え・・・?」
勿論、彼女ではなく・・・
ガキンッ!!
未来「―――だと思った」
リーチェの拳をブーツタイプの安全靴の底で受け止めながら、未来はニヤリと笑う。
笑いながら、足蹴りというリーチェの追撃をバックステップでかわす。
それからもリーチェの素早い猛攻は続く。が、未来はポケットに両手を入れながら軽々とそれをかわしていく。
紗那「あの・・・私は?」
未来「そりゃあれだろ」
言いながら、足を払おうとしてくるリーチェの攻撃をジャンプして避ける。
空中では逃げ場はない。次は確実に当てることが出来る、とリーチェは回し蹴りを放つ。
それは見事に・・・
未来「邪魔出来るなら邪魔してみろーって言いてぇんだろ」
当たることはなく、リーチェの足を踏み台に未来は紗那の前に下り立って言った。
リーチェ「!」
紗那「未来って・・・一体、何者?」
未来「悪者(笑」
紗那「言うと思ったよ〜・・・。どうやってあの速い攻撃を避けたり出来るの・・・・?」
未来「ん?攻撃なんてされてたか?」
紗那「へ?何言って・・・」
リーチェ「やはり、ですね・・・」
紗那「?」
リーチェ「やはりあなたは先程から今までのデータにない動きをする」
未来「新しいデータがとれてよかったじゃねぇか。
マフィアガッコの冬と夏の王者決定戦でいっぱい俺のデータを取ってたようにな」
フッ、と彼女は不敵に笑う。
つまりはそういうことだ。
今のリーチェの攻撃は、データを取るための準備運動でしかなかったということ。
リーチェ「だから・・・ですか。だからあなたは、夏の決定戦であまり剣技を使わなかったのですね」
未来「だから、あの時言っただろ?〈恥ずかしいから〉ってな(笑」
リーチェ「今回も使わないつもりですか?剣技だけでなく・・・刀すらも」
未来「だって使う必要もねぇだろ?」
リーチェ「次は本気でいきます」
未来「あぁ、出来るだけ俺を楽しませてくれ」
凄いスピードで向かってくるリーチェ。
それを迎え撃とうか、また避けようかと笑みを浮かべながら待ち構える未来。
互いの距離が2メートルに達した時、
紗那「させない!」
その2人の間に、彼女が鉄扇を構えて割り込んだ。
未来「Σ紗那!?バッ―――!」
リーチェ「あなたは5位。ただの庇護対象に用はありません」
鉄扇を振るう紗那の攻撃を簡単に避け、右腕で彼女の右わき腹に手刀を叩きこむ。それは埃を掃うような動作に近い。
払い飛ばされた紗那は、そのまま教室のドアにぶち当た―――
未来「ΣΣうにゃっ!?」
何故か紗那が払い飛ばされた先に未来が移動していて、紗那と激突する。
激突した彼女達2人は、ドアをぶち破って教室の床に倒れ込む。
(未来が紗那の下敷き状態)
紗那「Σ未来!?ど、どうして・・・!?」
未来「っ・・・紗那、お前ちょっと太ったな」
紗那「ΣΣえ、ウソ!?私、修業してたから減ってるはずなのに・・・」
紗那「(パフェ?昨日のパフェで太ったの!?)」
内心焦りながら、急いで未来の上から退く。
そうしていると、2人がぶち破ったドアからリーチェがやって来た。
リーチェ「また・・・あなたは私が出した推測と違う行動をとる。何故?」
未来「あぁー、クソ。チョー痛ぇ・・・。ん?ここ調理室か」
教室だと思っていたその場所は、水道やコンロなどが設置されている調理室だった。
未来は腰を握り締めた左拳でコンコンと叩きながら起き上がる。
未来「何故って言われてもな・・・俺だって完璧じゃねぇんだ。読み違えることだってある。体もケッコーガタがきてるしな。
お前がこいつを真っ直ぐ俺の方に吹っ飛ばしてくると思ったから、巻き添え喰らう前に退いておこうって考えて避けたんだけどな・・・。
まさか、避けた先に吹っ飛んでくるとは思わなかったよ。いやぁ、上手くいかねぇもんだな、まったく」
リーチェ「本当に・・・そうでしょうか。見方を変えれば、今のあなたは―――」
続けようとした時、未来がその言葉を遮るように先程と同じ言葉を言う。
未来「余計な問答はしねぇんだろ?」
リーチェ「ですね。あなたがどう考え、どんな行動をしようと・・・私には関係のないこと。
あなたが、抹殺対象であることに変わりはないのですから」
そう言って、立ち上がろうとしていた未来に殴り掛かる。
危険を素早く感知した未来は若干顔を引き攣らせ、床を転がって彼女の拳を避ける。
標的を失ったリーチェの拳は床にめり込み、礫(つぶて)を周りに飛び散らせる。
紗那「ぁうっ!」
鉄扇で飛んできた礫を防いでいたが、全て防ぐことが出来ず拳サイズの礫が額に直撃した。
一方未来は、転がり続けた先にあったコンロ等が設置されている机の後ろに隠れることで難を逃れる。
未来「アハハ・・・容赦ねぇな」
リーチェ「1位はしぶといですね・・・」
紗那「1位・・・?」
未来「そーいや、紗那は5位とか言ってたな。
ケンカランキングじゃねーとすると・・・それは殺しの優先順位ってとこか」
リーチェ「ご名答。1位の第一形態での抹殺は95.7%の確率で不可能と判断。第二形態へ移行します」
未来・紗那「「?」」
リーチェが言った言葉を2人が疑問に思った直後の出来事だった。
ガチャガチャ!ジャギッ!!という、何かを組み換え、金属同士が擦れるような奇怪な音がリーチェからした。
紗那「えっ・・・!?」
未来「容赦ねぇっていうか・・・もはや大人気ねぇよ、それ」
驚き目を見開く紗那と、先程以上に顔を引き攣らせる未来。
彼女達2人の視線の先にあるものは・・・
リーチェ「地に堕ちた者達が、再び栄光を取り戻す為の礎・・・。
その礎となる特殊兵器として開発されたのが、この私です」
淡々とそう語る彼女の背中からは、銀色に輝く4枚の鉄の羽のようなものが生えていた。
その外見は、蝶を思わせる。
未来「何でもありかよ・・・ったく」
リーチェ「今の私は、先程の第一形態の私の10倍の力を持っています。
くれぐれも、その程度の回避で逃げ切れるなどと思いませんよう」
彼女の背中の4枚の羽が羽ばたいたと思えば、その内の1枚・・・右上の羽が発光した。
その光は、調理室全体を飲み込む。
暗闇に慣れていた者達が、突然光を目に受ければどうなるか・・・
それは夜間車のライトを直接見るのと同じこと。
紗那「っ眩、しい・・・!」
まず目が眩み、それから改めて暗闇に慣れるまで何も見えなくなる。
つまりそれは、
未来「チッ・・・ムスカかよ」
大きな隙が生まれ、無防備な状態になるということ。
リーチェは・・・アンドロイド域を超えたこの少女は、その隙を逃さない。
未来の許へ回り込み、4枚の羽の内の1枚・・・左下の羽がチェーンソーのように回転させる。
彼女は切れ味抜群のその羽で未来の首を狙う。
リーチェ「―――終わりです」
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