Ver.黒曜・リング編
□終わりの始まり
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ツナ「東雲さん、歩ける?」
瑠璃「ちょっと・・・ううん、やっぱり無理そう。ってか、そんなことより・・・・」
彼女は後ろを振り返る。
先程まで自分やイーラが乗っていた分厚くて大きいマットが、ツナ達と話している間に消えていたのだ。
それは、つまり・・・
瑠璃「(篠原に何かあった・・・もしくは篠原の体力がなくなってきた証拠、だよね)」
心配そうな顔で、彼女は自分達が飛び降りてきた3階を見る。
見たところで、彼等の姿は暗くてよく見えないというのに・・・
瑠璃「(やっぱり観覧席で見た方がいいか・・・)」
そう考え、意地で足を動かして歩こうとすれば・・・
グラッ・・・
瑠璃「わっ」
ディーノ「東雲!?」
グチャグチャになった右足はやはり動いてくれず、瑠璃は見事にバランスを崩して倒れそうになる。
ディーノはイーラを担いでいるため、彼女を助けることは出来ない。
近くにいたツナやディックが動く前に、1人の少年が瑠璃の腕を掴んで彼女を支えた。
その少年は・・・
獄寺「危ねぇだろーが」
瑠璃「あ、ありがとう・・・獄寺。でも、もういいよ?ほら、獄寺の方がうちより重傷だし・・・・」
獄寺「こんなの掠り傷だ」
瑠璃「そう言って貧血とかで倒れられたら困るから言ってるんだって・・・(呆」
そんな会話をしながら、観覧席へ向かって歩いている時だった。
1階の窓を割って、銃弾が飛んできたのは―――
瑠璃「!?」
ディーノ「なっ・・・!?」
飛んできた銃弾は途中で2つに分かれ、瑠璃の右足とディーノが担いでいるイーラの体に当たった。
それは、希が失格になった十数分前の時のように・・・
瑠璃「いっ・・・たくない?」
撃たれた己の右足を見てみると、グチャグチャになっていた足のケガが綺麗さっぱりなくなっていた。
(折れた足は、治らなかったようだが)
体中をはしる鈍い痛みもしなくなっていた。
イーラの場合は傷が深かったからか、少ししか回復していない。しかしそれでも、ないよりは遥かにマシだろう。
山本「今のって・・・」
バジル「まさか、また風花殿が・・・?」
瑠璃「え、未来・・・?〈また〉ってどういうこと?」
すると、そこへ・・・
希「今・・・弾か、何かが・・・・飛んで、こなかったか・・・?」
ツナ「あ、それなら・・・さっきみたいに東雲さんとそのイーラって子に・・・・」
瑠璃「(さっきみたいに・・・?)」
希「そうか・・・。やっぱり・・・・」
リボーン「何があった?」
何か納得している風な希に山本の肩に座っている彼が聞く。
尋ねられた希はある1階の窓の方を見つめながら、静かに言った。
希「1階の方の・・・決着が、ついた」
観覧席で、その1階の様子を見ていた者達(主にヴァリアー)は、それぞれ違った笑みを浮かべていた。
微笑、失笑、憫笑、嘲笑、歓笑・・・。
その笑みは、カメラの映像に映る人物〈達〉に向けられたものだった。
彼等が見ているカメラに映っている者達・・・それは、
右足と右手を失くし、壁に背中を叩き付けられた状態のリーチェと、
彼女の前で小型の銃を懐にしまう―――未来。
瑠璃「何が・・・どうなってたの?」
観覧席にツナ達と共に駆けつけて来た彼女は、カメラの映像を見て皆に問いかける。
その問いに、何故か誇らしげにスクアーロが答えた。
スクアーロ「あのディスペラーレの女がただ返り討ちにあっただけだぁ」
瑠璃「あ・・・やっぱり?」
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―――時は、瑠璃が2階で洋一と海斗の2人に救出された数十分前に遡る。
未来「ねぇ 幾何学模様の心で描く
ねぇ その絵には何が足りないのかな?
全て一人で出来ると思ってたけど
この気持ちはなんだろう?
ふわり。
痛みとか 悲しみとか 全て受け入れて
辛いけど 頑張れる そう思ってたけど
ホントはね 気づいてた この強さなんて
偽りで 見せかけの 強さだってことを」
校舎内1階・・・。
右手のアサルトライフルをズルズル引き摺って歩きながら、左手で黒い宝石のペンダントをブンブン振り回しながら、彼女は歌を歌う。
その歌詞は今の彼女を語っているのか、それとも・・・
「―――死神ピエロ・・・風花未来、ですね」
歌の続きを歌おうとしていた彼女に、後ろからそんな落ち着いた声がかけられた。
未来は足を止め、振り返る
・・・と思わせ、アサルトライフルを後ろへ投げた。
ノーコンの彼女は狙ったところに正確に物を投げることが出来ない。自分でもそれはよく分かっている。
今投げたのは、後ろにいる人物に当てようとしたわけではない。(当たればそれでよい、とも彼女は考えていたが・・・)
彼女がライフルを投げた目的は、
自分が振り返ったと同時に襲い掛かってきたであろう後ろの人物を威嚇し、自分という存在を少し警戒させることだった。
そんな彼女の思惑通り、後ろにいる人物は襲い掛かる前に飛んできたライフルを警戒し、それを払いのけて立ち止まった。
後ろにいる人物がライフルを払いのけている間に、未来は素早く振り返る。
そして、笑みを浮かべ・・・
未来「いい反応速度だ。さすがアンドロイドと言うべきかな。
のぉ、―――リーチェとやら」
リーチェ「樋上洋一よりも厄介な相手ですね」
未来「へぇ、あいつとやり合ってたのか。で、結果は?」
リーチェ「決着はついていません。ですが、あのまま戦いを続けていれば、87.4%の確率で我々が勝利していたでしょう」
未来「我々?」
リーチェ「余計な問答は以上です。あなたはただ、私に葬られればいい」
未来「俺を葬る?そいつぁおかしな回答だ。俺を殺せばこの〈災厄を齎すもの〉の使い方は分かんねぇぞ?」
ブンブン振り回していた黒い宝石のペンダントを見せる。
リーチェ「命乞いですか」
未来「好きなように捉えてくれりゃいいさ」
リーチェ「〈災厄を齎すもの〉を全て揃えた後、ヴェスパファミリー6代目ボス候補、ディック・シルバに尋ねればいいだけです。
吐かない場合は、それ相応の手段をとります」
未来「ハハッ。マフィア警察って名乗ってる奴が随分真っ黒に染まっちゃって」
そこで、浮かべていた笑みを断ち、
未来「ホントに滑稽だな。―――他人に染め上げられた黒だって気付きもしねぇなんて」
とても冷めた表情で、冷たい眼差しで、冷たい口調で目の前にいる彼女にそう言った。
リーチェ「?仰る意味が、よく分かりません」
未来「余計な問答はしねぇんじゃねぇのか?(ニヤッ」
リーチェ「それもそうですね。・・・あなたが私に殺されるか、私があなたに壊されるか。命を懸けた死闘というものを始めましょう」
未来「ん、お相手いたそう。どっからでもかかってきんしゃい」
2人の少女は臨戦態勢にはいる。
未来はその場で動かずに待ち、リーチェは再び襲い掛かろうと全ての力を足に集束させる。
その時―――
カタンッ
後ろ(リーチェの)から、誰かが何かにぶつかったような音と、「キャッ」という短い悲鳴が聞こえてきた。
リーチェ「?」
未来「こりゃまた間が悪ぃんだか、間が良いんだか・・・(呆」
悲鳴の主の足音が段々こちらへ近付いて来る。
夜目が効く未来とアンドロイドであるリーチェには、その近付いて来る者がハッキリと見えていた。
(未来は悲鳴を聞いた時点で誰だか分かっていたが)
反対に、近付いてくる者は2人の姿が見えていない。2つのぼやけた影としか認識出来ていなかった。
仕方なく、未来はため息を吐いて言う。
未来「お前は何の為にここに来た?」
「え、」と悲鳴の主は声を出す。
気にせず、未来は言葉を続ける。
未来「〈災厄を齎すもの〉を探すため?このリーチェとやらを倒すため?
それとも、俺を倒すため?はたまたそれ以外の目的のため?
お前は何を選んだんだ?
―――紗那」
月を隠していた雲が動き、月明かりがその廊下を照らす。
廊下にいる、3人の人物を照らす。
未来とリーチェ、2人の視線を受けていた1人の少女は目をパチクリ瞬かせた。
紗那「私は・・・」
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