Ver.黒曜・リング編

□晴の守護者戦
2ページ/8ページ

.


紗那「お、おばけなんてないさ
   おばけなんてうそさ
   ねぼけたひとが
   みまちがえたのさ」


洋一「どーしたんだ、谷垣?急に・・・」


瑠璃「あぁ、紗那は見た目通り幽霊とかの類に凄く弱いから無理もないね。

こういうところは特にホラー映画の舞台になるし(笑」



今、うち等がいるのは夜の並中。


勿論、傍にはヴァリアーの人達もいる。

チェルベッロ機関とか名乗った女の人達もちょっと離れたところにいて、うち等と同じように待ってるの。


言わなくても分かると思うけど、うち等がここにいる理由は昨日の夜に宣言?されたリング争奪戦っていう戦いがあるから。


別にうち等は来る必要なかったんだけど(ていうか皆を見送ってベッドで寝たかったんだけど)、

人の戦いを見るのもいい修業になるとか何とか、ウソかホントか分からないことを言われて、結果的にベルに強制連行。



それでまだやって来ないツナ達を待ってるっていうのが今の現状。



瑠璃「夜の学校ってやっぱり不気味だね・・・」


ベル「しかもレヴィみたいなゴツイのもいるしな」


瑠璃「うん、お化け役にピッタリだよね」


ルッスーリア「そうねぇ。メイクも何もしないで素で子供を泣かせられると思うわ」


レヴィ「何だと!?」


紗那「わーん!ムッツリさん、こっち向かないでくださーい!!(泣」


レヴィ「Σ!?」


ベル「姫泣かしてんじゃねーよ」


洋一「名前じゃなくてムッツリで認識されてんだな、レヴィ・・・(苦笑」


瑠璃「哀れだね(笑」


スクアーロ「う゛お゛ぉぉい!遊んでんじゃねぇぞぉ、テメェ等ぁ!!」


瑠璃「あ、スクアーロさんもお化け役にピッタリかもしれませんね」


ベル「例えば?」



瑠璃「外国版、貞子(笑」



洋一「アハハッ!いける!それ絶対いける!」


紗那「ほんとにおばけが
   でてきたらどうしよう
   れいぞうこにいれて
   ガチガチにしちゃおう」


洋一「マーモンに頼めばガチガチにしてくれるんじゃねーか?」


マーモン「いいけど、金はもらうよ」



そんな和やかムード?で話してたら、いつの間にかツナ達が学校に来てたみたい。

ランボがかくれんぼを始めて遅くなった、とか何とか聞こえてきた。


・・・あれ?リンとディックは来ないのかな?



獄寺「奴等、まだ来てねーのかな」



いやいや、待たせてたのはそっちでしょ。

そしたら、うち等の言いたいことをチェルベッロの人が代弁してくれた。



チェルベッロ「とっくにスタンバイしてますよ」


ツナ達「!」


チェルベッロ「厳正なる協議の結果、今宵のリング争奪戦の対戦カードが決まりました」


チェルベッロ2「第一戦は・・・









―――晴の守護者同士の対決です




瑠璃「!」



それを聞いて、うちはほんの少し目を見開く。


ヴァリアーの皆がどの守護者なのかは昼に聞いたからちゃんと分かってる。




晴の守護者っていうのは・・・



ルッスーリア「あの坊やね」



うちの師匠、ルッスーリアさんだ。


ツナ側の晴の守護者はどうやら笹川さんみたい。



チェルベッロ「よくお集まりいただきました」


チェルベッロ2「それでは只今より後継者の座を賭け、リング争奪戦を開始します。あちらをご覧下さい」



チェルベッロの人達が奥を指差す。

言われた通りうち等がその方向を見ると、そこには・・・



ツナ「ああ!?Σな・・・何これー!!?」


瑠璃「なんか・・・スゴッ」



そこにあったのは、ボクシングとかレスリングとかで使うリング・・・。

こんなところに設置させていいのかな・・・?


チェルベッロの人の話を聞けば、晴の守護者の勝負のために用意した特設リングなんだって。

今回は晴の守護者の特性を考慮したリングとしたけど、争奪戦では各勝負ごとに特別な戦闘エリアを設置してそこで戦うんだって。



これ・・・別に並中じゃなくても出来るんじゃないの?



↑それ言っちゃおしまいだ(苦笑  by 洋一



ツナ「Σんなー!!あんな大がかりなものを〜!!?」



紗那「よくこんな短時間で作れたね〜」


瑠璃「いや、そこじゃないから(呆」


ベル「ケッコー、金かかってんね」


マーモン「でも勝負は見えてるんだ。無駄遣いだよ」




山本「先輩には悪くない条件だぜ」


了平「おう!リングは俺のテリトリーだ!」


ツナ「ほ、本当に勝負が始まるんだ・・・。ああ〜〜〜!!キンチョーする!!

何も分かってないお前が羨ましいよ」


地面に横になって眠っているランボに向かって言う。




ルッスーリア「ねぇ?ボスまだかしら?」


紗那「如月君と篠原君もどうしちゃったんだろ・・・」



そう、この場にボスさんと篠原と如月はいない。


如月はどうだったか知らないけど、篠原はうち等と一緒にここに来るはずだったんだ。



アノ人に・・・ボスさんに引き止められるまでは・・・・












   ◇  ◇  ◇













海斗「一体、何の用なんですか?用がないのなら、リング争奪戦というものの見学に行きたいんですが・・・」


希「俺は・・・ベッドに、行きたい。とにかく・・・・寝たい」


海斗「僕達2人だけ、というのには何か意味があるんですか?」



目の前でお酒を飲んでいるヴァリアーのボス、XANXUSさんの前で僕達はそんなことを言います。


リング争奪戦に行く為に、先に部屋を出たマーモンさん達を洋一や東雲さん、谷垣さんと一緒に追おうとすれば何故か僕だけ呼び止められたんです。

ソファーで寝ようとしていた希と一緒に・・・



そして今、その理由を聞こうとしているわけです。

黙ってXANXUSさんを見ていれば、彼はグラスをテーブルに置いてこう答えました。



XANXUS「お前等は何を知ってる」


希「へ・・・?」


海斗「どういう、意味ですか?」


XANXUS「〈災厄を齎すもの〉、についてだ」


海斗・希「「!」」



バレていた・・・?気付かれていた・・・?

この人は、明らかに確信をもってこんな質問をしてる・・・。


その証拠に、彼の紅い双眸が僕達を捉えて決して逃がしません。

威圧・・・眼光だけで人を殺せる勢いですね。



僕がその質問に答える前に、隣で希が口を開きました。



希「・・・知ってる・・・・だけど、知らない」
希「(このことを聞く為に・・・わざわざ俺をヴァリアー側に連れて来たのか。侮れないな・・・・)」


海斗「希の言う通りです。

〈災厄を齎すもの〉について1番よく知っているのは、1番よく理解しているのは僕達ではありません」


XANXUS「あの女・・・風花未来か」


海斗「おそらく。そして彼女も僕達もその知っていることを全て言うことは出来ません。たとえあなたでも・・・ね」


希「それは・・・〈秘密〉、だから・・・・」


XANXUS「・・・・・・」


海斗「ただ1つ、これだけはハッキリ言えます」


XANXUS「・・・何だ」


海斗「3日後の戦いは・・・無意味です。戦う必要がない、とまでは言えませんが意味がないんですよ、全く・・・・」



あれが神器なら・・・誰にも使うことが出来ない。


僕が洋一や希達の神器を使おうとしても使えないように、普通の人が神器を使おうとしても使えない。

神器を使えるのは、それを受け取った本人だけなんです。


だから・・・無意味。戦っても、何にもなりません。


ですが、復讐者(ヴィンディチェ)の人達はそれを分かってて、敢えて戦わせようとしていました。

それが何を意味していて、あの人達が何を考えてそうしているのかが僕と希には分からないんです。


分からない・・・分からないから、僕達はその戦いに、その物語に関わることを決めた。



海斗「僕達は踊らされているだけかもしれません、駒としていいように使われているだけかもしれません、

だから・・・隠された真実を、隠された意味を知る必要があるんです」


XANXUS「それだけの覚悟はちゃんと出来てんのか?」


海斗「覚悟・・・ですか?」


希「それは・・・真実を、知ることに、対する・・・・?」


XANXUS「違ぇ」



XANXUSさんは、僕達の目を真剣な表情で見ながら次の言葉を紡ぎます。

それは・・・その言葉は、僕達が心の奥底で気にしていた、僕達の胸にチクリとした痛みを生む1つの小さなトゲ。



XANXUS「お前等が求める真実が、必ずしも清く正しいとは限らねぇ。

その真実を、受け入れる覚悟は出来てんのか」


海斗「!」
希「っ・・・」



彼が言う〈覚悟〉はきっと・・・

辿り着いた真実がどんなに残酷なものでも、逃げ出さず、目を背けずに真正面から受け入れる覚悟のことなんでしょう。


そしてこの人は、それとなく僕達に告げている。

残酷な真実になる場合をあらかじめ想像していろ・・・と。



希「(自分と9代目の関係を知ってしまった、こいつだから言えること・・・か)」


希「優しい、んだな・・・」


XANXUS「かっ消されてぇのか?(睨」


希「滅相も・・・ござい、ません」


海斗「・・・受け入れられるかどうかは、正直分かりません。

どんなに残酷な場合を想像していたとしても、実際にそれに直面するとやはり驚くでしょう。

理解することも出来ないかもしれません。それでも、」



後の言葉を強める為に、僕は軽く深呼吸をします。

そして、目の前にいるXANXUSに向かって言います。



海斗「それでも、目を背けたりはしません。

だって、そんなことをすれば・・・未来さんを否定することになってしまう。それだけは、したくないんです」


XANXUS「・・・・・・」


希「あぁ・・・受け入れる、とか・・・・受け入れられない、とか、いう問題、じゃなくて・・・

俺達は、ただ・・・1人で、何もかもを・・・・背負ってる、風花を、連れ戻したい・・・だけ、なんだ」



僕達がそう言えば、XANXUSさんは僕達から視線を逸らして、テーブルに置いていたグラスを手に取ります。

それはまるで、興味が失せた・・・とでも言うかのように。



XANXUS「勝手にしろ」


海斗「ええ、勿論勝手にします。話はそれだけですね?それじゃあ僕はリング争奪戦というものの見学に行きます」


希「俺も・・・行く」


海斗「眠いんじゃないの?」


希「今ので・・・眠気が、吹っ飛んだ・・・・」


海斗「そう。なら行こうか」


希「あぁ」



XANXUSさんに一礼して(希はしませんでしたが)、僕達は争奪戦というものの舞台、並中へ向かいます。





だから・・・ですね。


だからその後、その部屋で何があったかは何も知らないんです。






XANXUS「・・・いつまでそうしてるつもりだ」



海斗と希が部屋から出て行った十数分後、彼は窓の方に声をかけた。


否、正確には窓の外・・・バルコニーに向かって。











暗い暗い夜の闇で包まれるそのバルコニーで、彼の言葉に反応するように目に見えない〈ナニカ〉が蠢いた。










.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ