Ver.黒曜・リング編

□Catastrophe
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紗那「分かってるって・・・何が、」


未来「俺が何もしねぇってことで、分かってるだろ?俺が朝、黒曜編の話をしたことで、分かってるだろ?

そして、この物語で誰が主人公なのか知ってるお前は、もぅ分かってるはずだろ?」


紗那「っ・・・」



それじゃあ・・・やっぱり、やっぱりこれは原作にある話で、主人公であるツナ君が骸君を倒しすってことなんだね。


ツナ君達主人公側からしたらハッピーエンド。


だけど骸君達敵側からしたらバッドエンド。



明と暗、光と闇が完全に分かれる・・・。




だから未来は、〈無理なお願い〉って言うんだ。


ここで2人の戦いを止めちゃったら、原作が変わるかもしれないから・・・。

世界を救いに来た私が、世界を壊すことになっちゃうから・・・。



紗那「どう、して・・・」


未来「今度は何に対する「どうして」かの?」


紗那「どうして・・・何も出来ないの。見てるだけしか、出来ないの」


未来「それは俺達が部外者(異世界人)だから」


紗那「それでも私は・・・助けたいよ。たとえそれで、







世界を壊してしまったとしても







未来「、」











○視点なし○


涙を流してツナと骸の戦いを見る紗那・・・


黙って何かを考える未来・・・




紗那は唇を噛み締め、拳を強く握り締める。


未来は何かを思い出すように虚空を見て、少し悲しげな顔をする。





経ったのは数秒、しかしその2人からすれば数分の沈黙・・・

その沈黙を破ったのは、紗那の先程と同じ「助けたい・・・」というか細い声だった。


未来はそれを聞いて、諦めたような疲れたようなため息を吐く。

そして・・・



未来「なら、自分のやりてぇようにやればいい」


紗那「え・・・?」


未来「助けてぇんだろ?ならそーしろよ。それとも、今の言葉はウソか?」


紗那「違う。私は本当に・・・」


未来「なら助けりゃいい」


紗那「え、えっと・・・」



すんなりと言ってのける未来に、紗那は戸惑いを隠せない。

彼女が何を思ってそう言ったのかが分からない。


そんな紗那を放って、未来はまた言葉を続ける。



未来「お前は世界とナッポー達を天秤にかけてナッポー達を選んだ。

なら迷うことなんてねぇ、自分が信じる通りにやりゃいいだけだろーが」


紗那「う、うん・・・」


未来「ただし、」


紗那「?」


未来「そこで変えた物語・・・いや、変えた未来がこれからどんなものになっても、お前はそれと真正面から向き合っていかなきゃいけねぇ。

最後まで逃げ出さず、見逃さず、諦めねぇでな。


―――お前にそれが出来るか?」



紗那「!」


未来「もし出来ねぇようならここで退け。全てを背負う覚悟があるなら止めに行け」


紗那「・・・・・・」



未来「いいか、紗那。脅すようなこと言うけどな・・・

お前が変えようとしてるこの物語の中には、お前だけじゃなくて他の皆の想いもたくさんあるんだ」


紗那「皆の・・・想い?」



未来「雲雀は襲われた生徒達、乱された並盛の秩序のためにここに1人で乗り込んだ。


獄寺はツナを守る為、ツナの役に立つ為に傷付きながらここに来た。


ビアンキはそんな獄寺が心配で、弟を守る為にここに来た。


山本はマフィアごっこって騙されながら、友達を守る為にここに来た。


フゥ太は酷いことをされても人質になっても、ランキングの能力を失ってもツナのことを話さなかった。


リボーンは手を出せねぇっていうもどかしい掟を破らず、ツナが勝つと信じて見守ってる。


ツナはその皆の想いを背負って、傷付けられた仲間の為に骸を倒そうとしてる」




そこで未来は一息吐いて、今度は少し離れたところに寝かせている5人を見て言う。




未来「ツナ達だけじゃねぇ・・・あいつ等だってそうだ。


洋一はきっと、歯を食いしばってこの残酷な物語に耐えただろう。


海ちゃんは俺がヘマやっちまったせいで〈参加者〉の駒になって、骸にも契約されて・・・それでも俺を、皆を助けようとしてくれた。


〈参加者〉を倒したリンは、ここまで付き合うことなんてなかったのに瑠璃達の為に来てくれたんだろう。


如月は戦えもしねーのに戦場に来て、あの盾で何度も皆を守ったんだろう。


瑠璃は瑠璃こそ戦う必要も、来る必要もないのにここまで来て、最後まで俺が来るのを信じて戦ってた。



勿論、骸達や俺にだって言わねぇけど強ぇ想いがある。



お前はその皆の想いを・・・







いっぺんに壊す覚悟はあるか?







紗那「!!」


未来「世界とナッポー達を天秤にかけてナッポーを選んだ。

次は、皆の想いと自分の想いを天秤にかけてみろ。お前はどっちを選ぶ?


シンキングタイムはそんなにねぇぞ。もぅすぐ、この戦いも終わるからな」



紗那「・・・私は、」



突き付けられたその未来の言葉に、紗那は改めて考える。



そこまでは考えていなかったな・・・と。


皆の想いを壊すことが私に出来るのか・・・と。


結局は全て自分のためにやろうとしていたのではないか・・・と。



未来「お前がどっちを選ぼうと俺は何も言わねぇ」


紗那「未来は・・・未来はどうするの?

私が物語を変えてもいいの?皆の想いを、未来の想いを私が壊してもいいの?」


未来「おいおい、そこで人の意見を求めるなよ。逃げに走んな、自分の意見を貫き通せ」


紗那「・・・・・・」




紗那は戦い続けるツナと骸を見る。

傷だらけの彼等には、もう戦ってほしくないと思った。



紗那は次に倒れている未来達や犬達を見る。

傷付いても尚、自分達の信念を貫いて戦った彼等の想いを壊したくないと思った。



紗那「私は・・・」



どちらも選べない、そう思った。


今戦っている2人がこれ以上傷付かず、且つ皆の想いを壊さずにこの物語を終える方法はないか・・・

そう考えたところで、いい案は浮かばない。



紗那「(全部上手くいくような、ハッピーエンドで終われるようなことはないの・・・?)」



彼女は1人、この残酷な現実に心の中で嘆きながら涙を流す。







そんな聖女のような彼女の姿は、この戦場にいる誰の目にも映らない。









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