Ver.黒曜・リング編
□Catastrophe
2ページ/8ページ
.
暗い暗い世界の中・・・私は1人、目を覚ます。
紗那「・・・あれ?」
ここは・・・何処?
暗い暗い、どこまでも暗い・・・海の底みたいな場所。
水の中なのに息が出来る。海の中なのに波を感じない。ただ感じるのは浮遊感と虚無感。
そんなところで、私は1人仰向けの状態で目を覚ましたの。
(もしかしたら私は底を見てて、本当はうつ伏せになってるのかもしれないけど)
紗那「私は・・・」
何をしてたんだっけ?
どうしてこんなところにいるんだろ?
ボーッとする頭でそんなことを考えてみる。
紗那「私は・・・」
「まさか・・・このような形でまた会うことになるとは、思ってませんでしたよ」
紗那「!」
「もうここで・・・―――お別れです」
紗那「そうだ!骸君!!」
私は林の中で骸君に出会って、眠らされて、それで・・・!
・・・それで?
紗那「それで、どうなったんだろ・・・?」
分からない・・・。
骸君達は?ツナ君達はどうなったの?未来と篠原君は無事なの?
それすらも、分からない・・・。
いくら考えても、答えは出てきてくれない。
紗那「皆・・・」
ポツリとそう呟けば、上で何かがチカチカ光って誰かの声が聞こえてくる。
「骸・・・お前を倒さなければ・・・・」
紗那「え・・・?」
その声は聞き慣れた、知ってる声なんだけどどこか違う。
だって、いつものアノ人からは考えられない、凄く落ち着いた声なんだもん。
「死んでも死に切れねぇ」
紗那「ツナ君・・・」
どうして、そんなことを言うの?
どうして、そこで骸君の名前が出てくるの?
どうして・・・
紗那「違う・・・」
その答えは、その答えだけは分かる。
ツナ君はきっと傷付けられた皆のために戦ってる。皆を傷付けた元凶が骸君だから、骸君の名前が出てくる。
分かってる。ちゃんと分かってる。けど、それでも・・・
紗那「ヤダ・・・戦わないで」
聞こえるはずもないのに、届くこともないのに、私は泣きそうになりながらそう言って、必死にその光に手を伸ばす。
そんな私の意思に反して、体は底へ底へと沈んでいっちゃう。
ダメ・・・そっちじゃない。
私は上に行かなきゃいけないの。
ツナ君や・・・骸君のいるところに行かなきゃいけないの!
紗那「お願いだから・・・」
ガッ!
ボカッ!
ガキッ!
ドスッ!
聞こえてくる破壊音だとか、攻撃する音に、私の目からとうとう涙が零れる。
そしてまた、底へ底へ引っ張られる力が強くなる。
この力はきっと、私の心・・・。
2人の所に行かなきゃって思ってる反面、
見たくない、見たくないって嘆いて悲鳴を上げてる心が自己保身の為に上に行くのを拒んでる。
でも、それじゃダメなの。
このまま何もせず、ここで黙ってることなんて出来ない!!
紗那「これ以上・・・傷付けあわないで!」
今度は光に向かって両手を伸ばせば、体がどんどんその光に向かって進んでいく。
意識が段々浮上していく。
私、起きてるけどまだ起きてなかったんだ・・・。
骸君・・・今行くからね。
今度は・・・今度こそ、骸君を止めてみせる。
紗那「私はもう逃げないよ。目を逸らしたりもしない」
もう光は目の前で、私はあまりの眩しさに目を閉じた。
その眩しい光の明るさが引いた時、私はゆっくり目を開ける。
見えたのは、ボロボロの天井・・・
私はソファーみたいなところに寝かされてるみたい。
今も続く破壊音とか殴る音だとかの方に視線を向けたら・・・
おでこにオレンジの炎を灯したどこかいつもと違うツナ君と、
右目から血を流して棒を持ってる骸が戦ってた。
その近くにはリボーン君がいて、少し離れたところには傷付いた皆が寝かされてた。
瑠璃達まであんなにケガを・・・!
紗那「や、めて・・・」
涙を流しながら掠れる声でそう言っても、戦ってる2人にそんな小さな声は届かない。
嗚咽を漏らしながらもう1回「止めて」って言っても、戦ってる2人にそんな情けない声は届かない。
紗那「戦わないで・・・」
「―――それは無理なお願いなんよ、紗那」
紗那「!」
近くで聞こえたその声に、私は戦ってる2人から声がした方に視線を向ける。
それは私がいるソファーのすぐ近く、舞台の上・・・
そこに座って骸君とツナ君の戦いを見ながら、足をブラブラさせてる見覚えのあり過ぎる人・・・
紗那「未来・・・」
未来「眠り姫は王子のキスで目覚めるかと思ったら、そぅでもなかったんだな」
紗那「何で・・・」
未来「それは何に対する「何で」じゃ?」
「無事だったの?」とか、「どこにいたの?」とか、「何があったの?」とか、「ケガしてるけど大丈夫?」とか・・・
聞きたいことは、言いたいことはいっぱいあった。
だけど、今聞きたいのは、今言いたいのはそのどれでもない。
何で・・・
紗那「何で、無理なお願いなの・・・?」
私がそう尋ねれば、未来は初めて私に視線を向けてフッと笑みを浮かべた。
それは、どこまでも冷たい笑み・・・。
それでいて、少し悲しみを帯びた・・・・骸君と同じ笑顔。
未来はそんな笑顔を浮かべながら、酷く落ち着いた声で私に言う。
未来「―――もぅ分かってるくせに」
.