Ver.黒曜・リング編

□優しい人
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瑠璃「どうやってあの人達を帰したの?」



リンが林の中に〈参加者〉の3人を連れて行った後、人形にされてた人達が元に戻ったの。

それはあの〈参加者〉がリンに〈脱落〉させられた証拠・・・


元に戻った人達は色々なことに驚いてる感じだったんだけど、いつの間にか自分の足でこのヘルシーランドから出て行っちゃった。



海斗「幻覚をかけただけです。自分の家に帰れば解けるようにしたので、今までのことは全部夢だと思うでしょう」



洋一の蹴りを受けたお腹が痛むのか、篠原は片手で押さえながら疲れたように言う。


結局、うち等が助けなくても篠原は自分で何とか出来たんだよね・・・。

そう考えると、うち等って何しに来たんだろって気持ちになるよ(苦笑



海斗「(公園の幻覚の維持と、あの人達が帰るまでの幻覚の維持・・・

どっちにも力を使うのはさすがに疲れるなぁ・・・・)」


希「海斗、」


海斗「何?」


希「無理は・・・するな」


海斗「!・・・うん、大丈夫。僕ならまだやれるよ。

誰かさんが中途半端にケガさせてくれたおかげで、普通に動けるからね」



洋一「それ、絶対俺のことだろ!?俺だってお前のメイスで骨何本かいっちまったんだからな!」


海斗「あぁ、それはきっとアノ(決定戦の)時のケガでクセになってるんだよ。

だから僕のせいじゃないと思う」


洋一「いや、間違いなくお前の攻撃のせいだからな!?」


海斗「もぅうるさいなぁ・・・。

あの時は僕だってまだ操られてるフリをしなきゃいけなかったし、明らかにあの3人の方が有利だったから動くに動けなかったんだよ。


大体、やるならもっとボコボコにしてくれればよかったのに・・・」


洋一「そんなこと出来るはずねーだろ!」


海斗「出来なくてもやってほしかったんだよ。

あのパイナップルを知ってる洋一ならこう言えば分かると思うけど・・・


僕は、よく意味が分からないけど〈契約〉もされてるんだから」



洋一・希「「!!」」



リン「え、それホント?じゃあ今すぐ俺がボコボコに―――」


右肩に包帯を巻いて手当てがしてあった。




海斗「あなたにやられるぐらいなら、東雲さんにやられる方がまだマシです」


瑠璃「おい!それどーいう意味!?」



洋一「たとえ、そうだとしても・・・やっぱ俺には出来ねぇよ」


海斗「それだと僕だけじゃなくて、皆も困るんじゃないの?」


希「多分・・・大丈夫、だ・・・・」


海斗「大丈夫って、何を根拠に・・・」


希「・・・それに、風花が、無事・・・・なのか、お前も・・・ちゃんと、確かめたい・・・・だろ?」


海斗「!それは・・・そうだけど、」


洋一「よし!じゃあ決まりだな!海斗は俺達と一緒に骸の許まで行く!

後のことはそれから考える!!」


海斗「そんなアバウトな・・・(呆」




山本「色んな刺客がいるんだなー」


獄寺「呑気に言ってる場合か、テメェは」


ツナ「さすがにもーいないよな?」


ビアンキ「いるわ」


瑠璃・ツナ「「え・・・」」



ビアンキさんが見てるのは林の中・・・


確かに、人の気配を感じる・・・。



ビアンキ「隠れてないで出て来たら?・・・来ないのなら、こちらから行くわよ?」




すると・・・







「ま、待って・・・」






瑠璃「!この声・・・」


海斗「・・・・・・」


彼は静かに目を伏せた。







フゥ太「―――僕だよ」





ツナ「フゥ太!!」


獄寺「こ・・・こんなところに」


山本「逃げてきたんじゃねーのか?」


ツナ「と・・・とにかく、よかったー!元気そーじゃんか〜!」



ツナ達が喜ぶ中、うちは気付いた。

洋一達が苦い顔をしてフゥ太を見てることに・・・。


ねぇ、どうしてそんな顔してるの?

フゥ太に何かあるってこと・・・?



うちがそんなことを考えてる間にも、ツナがフゥ太に近付いて行く。

だけどフゥ太は・・・



フゥ太「来ないで、ツナ兄」



ツナ「えっ・・・?」



フゥ太「僕・・・もう皆のところには戻れない。僕、骸さんについていく・・・・」



ツナ「な・・・何言ってんだ・・・・?」


海斗「っ・・・」


洋一「戻って来い、フゥ太!」



フゥ太「さよなら・・・」


目に溢れんばかりの涙を溜めて、林の中へ駆けて行った。



ツナ「ちょっ・・・待てよ、フゥ太!」


瑠璃「どーいうことなの?」



ツナ「フゥ太!おい、待てって!!」


希「俺も・・・ちょっと、行って、くる・・・・」



リン「え、如月?」


獄寺「10代目!深追いは危険です!!」


山本「どーなってんだ・・・?」



走って行ったフゥ太をツナと如月は追いかけるの。

フゥ太・・・どうしてあのパイナップルについて行くなんて言うの?



洋一「ツナ!希!俺も行―――」



洋一も2人の後に続いてフゥ太を追いかけようとした時、うち等の前に・・・


―――新しい刺客が来た。



それも、物凄く悲しい顔をした・・・










   ◇  ◇  ◇











ツナ「ひぃっ、黒曜生ーーー!!」



林の中に入ったツナは、いつの間にか希とはぐれ1人で本物の骸に出会っていた。



骸「助けに来てくれたんですね!」


ツナ「え!?」


骸「いやぁ、助かったー。一生ここから出られないかと思いましたよー」


ツナ「(もしかしてこの人、黒曜中の人質・・・?)」


ツナ「あの・・・期待してるとこ悪いんですが、まだ・・・・助け出す途中っていうか」


骸「あっ、すっすいません。1人で先走ってしまって・・・。

でも、助けにきてくれたという行為に本当に感激してるんですよ、ありがとう」


ツナ「いや・・・そんな〜」


骸「凄いな〜。やはり選りすぐりの強いお仲間と来られたんですか」


ツナ「いや、あの・・・女の人や女の子や赤ん坊もいたりするんですけどね・・・・」


骸「え・・・赤ん坊?こんな危険な場所にですか?」


ツナ「え・・・まぁ、詳しくは言えないんですが・・・・」



ツナは、この目の前の少年こそが本物の六道骸だとは勿論分かってはいない。

しかし言ってはいけないと本能で悟っているのか、なんとか話を誤魔化そうとした。



ツナ「あ、そーだ。それより、雲雀さんと風花さん、谷垣さんって並中生知りませんか?」


骸「ここのどこかの建物に幽閉されています」


ツナ「やっぱりここにー!?何処の建物か分かりませんか?」


骸「今質問してるのは僕ですよ」


ツナ「え・・・?」


骸「その赤ん坊は、間接的に何をするんですか?」



前髪で隠れていた骸の赤い右目がツナを捕らえ、その瞬間明らかに場の空気が一変した。


隠れていた左右違う色の右目には、数字の六が刻まれている。



ツナ「そーだ!はぐれちゃったんで皆の所に戻らなきゃ。友達とまたきます!じゃあまた!」


走って行った。


骸「クフフフ」





千種「やはりあの赤ん坊、アルコバレーノ」


骸「そのようですね。そして赤ん坊は戦列には加わらないが、何か手の内を隠している・・・。

ボンゴレ10代目に手をかけるのはそれを解明してからにしましょう」


千種「・・・嬉しそうですね・・・・」


骸「実際に対面してみて呆気にとられているんですよ。

神の采配と謳われ、人を見抜く力に優れているボンゴレ9代目が後継者に選んだのは、僕の予想を遥かに越えて弱く小さな男だった・・・。


何なんだろうね、彼は・・・。クフフ、クフフフフフ・・・・」


千種「・・・・・・」


骸「まぁ、どちらにせよ、あのアルコバレーノの手の内はすぐに見れますよ。

彼等の手には負えないでしょうからね。―――あちらの六道骸は」











「だと、いい・・・な」







骸・千種「「!」」



近くの木の影からの声に、2人は即座に警戒の色を強める。

だが、その木の影から出て来たのは、警戒する必要のない無力な人物・・・



希「ツナは・・・お前が、思ってる、以上の・・・・人間だ」


骸「そうですか・・・。それより、あなたは何の用ですか?」


希「・・・別に、用と言う用は、ない。ただ・・・・ついでに、立ち寄った、だけ・・・。だから、ついでに・・・・・言う」


骸「(ついで・・・?)」



無表情、無感情の彼を見ても、何も読み取れない。


そしてそんな彼は、壊れた機械のように言葉を続ける。



希「お前が・・・お前達が、何を、しようと・・・・俺の、知ったことじゃない・・・。

けど、それで・・・谷垣を、傷付けるなら・・・・許さない」


骸「許さない、ですか・・・」


希「まぁ・・・お前は、そんなこと・・・・しないと、思うけどな・・・。

一応、念を・・・押して、おく」



それだけ言って、希は骸や千種から視線を逸らす。

空に黄色い鳥が飛んでいるのを見て、そっと手を伸ばした。



鳥「バーズヤラレタ!バーズヤラレタ!」



バーズによって訓練をされているその鳥は、希の手にとまって骸達に何度もそう言った。


希はそんな鳥を指で撫でながら、微かにほんの微かに微笑を浮かべる。



希「それ、じゃあ・・・俺は、もう、行く・・・・」


骸「・・・・・・」



黄色い鳥を連れて何処かへ歩いて行く彼の背を、骸と千種は黙って見ていることしか出来なかった。







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