Ver.黒曜・リング編
□激突と衝突
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骸「あなたにも、その子の為に僕達に協力してもらいますよ・・・篠原海斗」
海斗「ええ、いいですよ」
フゥ太「海斗兄・・・」
海斗「・・・あなた達と谷垣さんがどういう関係なのかは知りませんが、」
骸「?」
海斗「あなた達が犯した罪に、彼女を巻き込まないでください。
まぁ、これは言わなくても分かっていると思いますが」
骸「・・・・・・」
「骸より、私達の方に協力してもらうのが先だと思うけどなー」
海斗「・・・分かってますよ」
分かってる。
今の僕にはまだ何も出来ない。今はまだ何も出来ない。
アノ人を・・・
海斗「(未来さんを助けるまでは・・・)」
ギュッと、拳を強く握り締めた。
◇ ◇ ◇
紗那「ハァ・・・」
私は木に寄りかかって、骸君達のことを考えてるの。
ちょっと離れた所で、ツナ君達が弁当の話してる。
でも、今の私にはそんなのどうでもいい。食欲だって全然わかない。
骸君達のことや、未来と篠原君のことが気になり過ぎて、それどころじゃないの・・・。
紗那「何で、こんなことになったんだろ〜・・・」
昨日までは、いつもと変わらない毎日だったのに・・・
皆で笑ってる、いつも通りの毎日だったのに・・・
どうして、こんなことになったんだろ・・・
ケンカを売ってきた骸君達が悪いっていうのは分かってるんだけど・・・
私は、何か理由があるんだって思わざるをえない。
友達同士が戦ってるところを見るなんて・・・私には耐えられない。
紗那「私は・・・どうしたらいいの?」
小さくそう呟いて、私は空を見上げる。
青い、蒼い、どこまでも澄み切った空・・・
そこにある輝く太陽が、暗い私の心を照らし出す。
紗那「弱気になってる場合じゃないよね。
私は元気、私は元気。だから、大丈夫」
自分自身にそう言い聞かせながら、私は両手でパンパンと顔を軽く叩く。
そして、皆の許に戻ろうとしたら・・・
「・・・――」
紗那「・・・え?」
誰かの声が聞こえた気がして、私は足を止める
何処にも、誰もいない・・・。
気のせいかな〜・・・?
っていうか、あれ・・・?前にも、こんなことがあったような・・・・
「紗那・・・」
紗那「!」
今度はハッキリ聞こえた、私を呼ぶ声。
聞いたことのある綺麗な声・・・。
前と全く同じ。違うとすれば、夢と現実の違いと場所だけ。
この声は、やっぱり・・・
紗那「―――骸君?」
何でか分からないけど、そこにいる気がして私は前みたいに後ろを振り返る。
見えるのは、薄い靄(もや)みたいな霧・・・
私はその霧の中に、ゆっくりと入って行く。
胸元のペンダントが輝いて、私の周りだけその霧の幻覚が消えてなくなる。
その霧の奥には、夢で会ったシャツに黒いズボンの格好じゃなくて、黒曜の制服を着た骸君がそこに立って私を見てたの。
紗那「骸君!」
私は駆け出して、骸君の傍に行く。
骸君はそこに立ったまま、また私の嫌いな少し悲しそうな微笑を浮かべてるの。
骸「久しぶりですね、紗那・・・」
紗那「やっぱり・・・骸君だよね?本当の、本物の骸君だよね?」
さっきの写真に写ってた黒い人が骸君じゃなくて、ここにいる、今私の目の前に立ってる骸君が骸君だよね?
そうだよね?そうなんだよね・・・?
骸「・・・っ」
紗那「骸君、どうして・・・」
どうして並中に、ツナ君達にケンカを売るのかを聞こうとしたら、それよりも早く骸君が口を開いたの。
自嘲的な笑みを浮かべながら、骸君は言う。
骸「まさか・・・このような形でまた会うことになるとは、思ってませんでしたよ」
紗那「そんなの、私だって・・・こんな再会になるなんて、思ってなかったよ」
夢で、今度は現実で会おうって言ってたのが、こんな悲しい現実で会うことになるなんて・・・。
私はもう、あの時みたいに笑えないよ。
紗那「ねぇ、骸君・・・お願い、教えて。どうしてこんなことするの?
千種君と犬君、いっぱい傷付いたよ?2人だけじゃない、私の学校に通ってる人達もいっぱいいっぱい傷付いたんだよ?
なのにまた、傷付けあうの?」
骸「・・・・・・」
紗那「教えて、骸君。ちゃんと私の目を見て、理由を教えて?」
じっ、と真っ直ぐ骸君の目を見てそう言えば、微かに骸君の赤と青の瞳が揺らいだの。
だけどすぐに逸らされちゃった。
紗那「骸君、」
骸「あなたには関係のないことです。知る必要のないことなんです」
紗那「どうしてそう突き放すようなこと言うの?
関係ないなら、どうしてここに来たの?
関係ないのに・・・どうして他の皆を巻き込むの?答えて、骸君」
骸「僕達の目的のためです。
その目的は、あなたに理解されなくていい。あなたが理解しなくていい」
紗那「・・・そんなの、ズルいよ」
骸「ええ、僕はいい人間ではありませんからね」
何で・・・どうしてそうやってはぐらかすの?
未来やリン君みたいに、どうして教えてほしいことは何も教えてくれないの?
本当にズルいよ・・・。骸君は意地悪だ。
私がどんな気持ちで言ってるのか分かってて、そんなこと言うんだから・・・
骸「僕がここへ来たのは、あなたに1つ・・・聞きたいことがあったからです」
紗那「・・・何?」
骸「あなたは・・・こうなった今でも、
僕達のことを〈友達〉と言うんですか?」
紗那「何それ・・・」
まさか、こんな時に出てくる言葉だとは思わなくて、私は軽く笑っちゃった。
笑えないとか思ってたのに、こーいう時は笑えるなんて・・・私は変な子だね。
骸「答えてください」
紗那「そんなの当たり前だよ。私達は友達。こんなことで、友達じゃなくなったりしないよ。
友達だから、もうこんなことを続けないでほしいの」
骸「そう、ですか・・・。
なら、仕方ありませんね」
紗那「骸君?」
骸「あなたに、ここでまた会うことが出来てよかったです」
紗那「・・・何で?」
何で、友達かどうかなんて聞いたの?
何で、よかったなんて言うの?
何で、またそうやって・・・
―――綺麗に微笑むの?
骸「本当に、あなたと出会えてよかった」
屈託のないその笑顔に、胸がドクンと高鳴る。
頭では、今ここでその言葉が出てくるのはおかしいって考えてるのに、心は骸君の本当の笑顔を見れてよかったなんて思ってる。
骸「もうここで・・・」
紗那「むく―――」
名前を呼ぼうとして、私は異変に気付く。
甘い匂いがする・・・。
その匂いのせいなのかな?意識が段々遠のいていく・・・
これも幻覚・・・?
骸「―――お別れです。おやすみなさい、紗那・・・」
私が意識を失う瞬間、骸君がそう呟くのが聞こえた気がした。
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