秘密を守れますか?
□Petrel(後編)
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銀髪の少女は笑みを浮かべながら、懐に入れた〈モノ〉を取り出す。
チェックメイト、とでも言うかのように海斗にソレを見せびらかした。
それは・・・少し大きいビー玉。
それが何かの血を吸ったように赤黒く染まっている。
海斗「(まさか・・・未来さんの血をあれに!?)」
少女「―――終わりよ」
強く、今までよりも強くそのビー玉を握りしめようとした瞬間、
「それはどうかな」
少女「!?」
その少女に向かって〈ナニカ〉が飛んできた。
彼女はそれを小太刀の結界で弾き飛ばす。弾き飛ばされた〈ナニカ〉は地面に突き刺さった。
少女「刀・・・?」
「遅い」
少女「!」
後ろから聞こえてきたその声に、少女は振り返ることが出来なかった。
何故なら・・・
リン「どうやらお前は戦闘慣れしてないようだな」
少女「っ!」
自分の首元に、後ろから1本の刀が突きつけられていたからだ。
海斗「リンさん!?」
リン「俺が1番に駆けつけようと思ったのに、先を越されちゃったね」
「1番に来てたから篠原君、電話しても出なかったんだね」
海斗「!」
後ろから聞こえてきたその聞き慣れた声に振り返ると、小さな未来の傍に2人の人物がいた。
海斗「谷垣さん!希!」
「ったく、他の〈参加者〉に襲われたんじゃねーかってヒヤヒヤしたぞ」
紗那達に遅れて、また2人の人物がやって来た。
海斗「洋一と東雲さんも・・・どうしてこの場所が?」
瑠璃「この時代の未来が書いた手紙は、如月にも宛てられてたの。
その手紙に全部書いてあったらしいよ」
海斗「手紙に・・・?」
リン「まさか、こんな意外な場所だったなんて誰も思わないよね」
希「いや・・・そうでも、ない。
呪詛・・・つまり、呪いを行なう、呪者は・・・・鬼魅(きみ)――死者の霊や、精霊に、依頼・・・する、ものなんだ」
その希の言葉に、銀髪の少女はピクッと反応する。
希「だから・・・日本の、藁人形、なんかは・・・・精霊に、依頼する為に、
―――神社の、ご神木に、打ち付けるんだ・・・」
そう、この場所は呪いが行える場所、〈神社〉だった。
希「だから・・・いるとしたら、ここしか・・・・なかったんだ」
少女「詳しいのね」
希「俺も・・・お前と、似たようなもの、だからな・・・・。うちが、神社だから・・・物心ついた時から、聞かされてた・・・・。
まぁ・・・手紙を、読むまで、俺も・・・・忘れてた、けどな」
少女「誰が何人来ようと、私はその女を殺すわよ。たとえ、〈脱落〉させられようとも道連れに殺す」
洋一「お前っ・・・!」
リン「そんなこと、俺がやらせないよ」
希「大、丈夫だ・・・(小声」
離れたところにいる銀髪の少女に聞こえないように、小さい声で言う。
海斗「?どういうこと?」
紗那「手紙に呪いを解く方法が書いてあったんだよ〜(小声」
瑠璃「本当に?」
希「あぁ・・・風花は、俺より、賢い・・・・。
谷垣、始めて・・・くれ」
紗那「うん!未来、ちょっと待っててね。すぐに楽にしてあげるから」
小さな未来に近寄って行く紗那を見て、銀髪の少女はニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
自分に向かって近づいてくる紗那を見て、反対に小さな未来は絶望的な顔をする。
小さな未来「(ダメだ・・・!)」
呪いを解く方法は、勿論彼女も知っている。そして、その時に起こるであろうことも、手紙を読んだことで容易に想像出来た。
何故、すぐに道連れとして銀髪の少女が自分を殺さないか、ということで答えは出てきていた。
小さな未来「(ダメだ!来ちゃダメだ!)」
声を出そうとしても、出てくるのは赤い液体だけ。
体を動かして紗那から離れようとしても、バランスを崩してまた地面に倒れるだけ。
紗那にはそれが危険な状態に見えたのだろう。
瑠璃と一緒に、慌てて小さな未来に向かって駆け寄って来る。
それを視界の端で捉え、小さな未来は今にも泣き出しそうな顔になる。
海斗・リン「「(未来さん/未来の様子がおかしい・・・)」」
紗那がペンダントを取って、小さな未来にかざそうとした時だった。
小さな未来「――――――っ!!!」
声になりきらない、彼女の掠れた叫び声が海斗とリンの耳に届く。
その叫び声はまるで・・・
「僕に近寄っちゃダメ!!!」
と、言っているように聞こえた。
紗那が、小さな未来の傍で十字架のペンダントをかざして呪いを解こうとする時、
小さな未来の体中に黒い染みのようなものが浮かび上がる。
海斗「!」
紗那が、小さな未来の傍で十字架のペンダントをかざして呪いを解こうとする時、
銀髪の少女は小太刀を地面に落とし、その袖の中からジャラと何かを取り出す。
リン「!」
小さな未来「――っ!!!」
彼女の掠れた叫び声を合図に、それは起こった。
ドシュッ――!
小さな未来の左腕から、白い大蛇が紗那に向かって飛び出したのだ。
紗那「え・・・?」
その瞬間―――
――ザシュッ!
真っ赤な鮮血が辺りに飛び散った。
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