秘密を守れますか?
□皆の休日
4ページ/7ページ
.
希「寒い・・・」
ケーキ作りからゴキブリ駆除、そして駆除の為の買い物にイベント変更。
今日、日曜日だよな・・・?日曜なのに、全然休めてない。
あれだな。俺が、あんなこと言ったのが間違いだったんだな・・・。
30匹なんて、言わなきゃよかった・・・。
結局、選択肢2の外に出ることになってる・・・。
希「人生・・・何が、どう転ぶか、分からないな・・・・」
紗那「え、何の話?」
希「何でも・・・ないです」
紗那「そう?それより早く買って、ケーキ作り再開しようね!」
希「もう・・・ナミモリーヌで、買った方が、早いと・・・・思う・・・」
紗那「苦労して作ったケーキが1番美味しいんだよ〜」
希「俺は、楽して・・・食べたい」
だって、苦労してるの基本俺だから・・・。
マフラーに顔を埋めて、寒さに耐えながらイベント、駆除の為の買い物を達成すべく俺は谷垣と一緒に歩き出す。
けど、数歩歩いたところで何かが俺達の横を凄い速さで通り過ぎた。
希「何だ・・・あれ?」
紗那「ツナ君だね」
希「何で・・・また?」
俺がそう言うと、また何かが俺達の横を通り過ぎてツナの後を追いかけて行った。
あれは・・・イヌ?
紗那「ペットショップのアルバイトでもしてるのかな〜」
希「羨ましいな」
すると・・・
ツナの声「アルバイトでも何でもないからね!!?」
紗那「さすがツナ君、こんなに距離があるのにちゃんとツッコミを入れるなんて・・・」
希「アルバイトじゃ、ないなら・・・何なんだ?」
すると今度は・・・
リボーン「レオンにやる餌を間違ってツナにぶちまけたんだ」
希「あぁ・・・それで、追われてる、のか」
紗那「また入院しないよう程ほどにね〜」
リボーンと別れて、俺達はまた歩き出す。
遠くからツナの断末魔染みた悲鳴が聞こえてきたけど・・・聞かなかったことにしよう。
並盛商店街に向かって歩いていた俺達は、住宅街の曲がり角で誰かとぶつかった。
紗那「いった〜い・・・」
獄寺「谷垣に如月!?」
希「まず・・・謝るのが、先じゃ、ないのか・・・・?」
獄寺「うるせっ。俺は今それどころじゃ―――」
「待たんか、タコ頭ーーー!!!」
あれ・・・?この声って、
獄寺「ゲッ、もう追い付いてきやがった!」
了平「我がボクシング部に入れ、タコ頭ーーー!!!」
なるほど・・・獄寺はこいつに追われてたのか。
逃げる獄寺、それを追う了平・・・。
ツナといい、獄寺といい・・・ボンゴレファミリーは、追いかけられる奴ばかりだな。
紗那「今日も笹川さんは元気だね〜」
希「夏でも、冬でも・・・お構いなしに、暑苦しいから、な・・・・」
小さくなっていく2人の背中を見送って、俺達はまた歩き出す。
なんか・・・次も誰かに会いそうだな。
その俺の予感が的中したのか、商店街に入る前にあいつと遭遇した。
雲雀「やぁ」
紗那「あ、雲雀さんだ〜。日曜なのに、どうして制服のままなんですか?」
雲雀「風紀委員に休日なんてないよ。今は町の見回りだ」
希「ワーカホリック・・・か」
雲雀「それより、風花は帰って来た?」
紗那・希「「あー・・・」」
またか・・・。
4人がイタリアに行ってから、雲雀は毎日のように、俺達に風花は帰って来たかって聞いてくるんだ・・・。
風花、何で雲雀に連絡しないんだ・・・。いい迷惑だぞ、こっちは。
紗那「全然帰って来る気配ないです。連絡すらないです」
希「きっと・・・俺達の・・・・こと、忘れてるん、だろうな・・・」
紗那「えー、ウソー!そんなの酷いよー!!」
雲雀「そう・・・。ならいいよ」
そう言って去って行く雲雀・・・。
風花、帰って来たらきっと咬み殺されるか、仕事を延々とやらされるだろうな・・・。
紗那「雲雀さん、未来があっちに行っちゃってから元気ないね」
希「そう、か・・・?」
紗那「そうだよ〜。だって群れてる人がいたらいつもすぐトンファーでやっつけてたのに、最近は興味なしって感じだもん」
希「丸くなった・・・とは、考えないん、だな・・・・」
まぁ、あの雲雀に限って丸くなることなんて絶対にないんだろうけど・・・。
商店街に入って、俺達は目的の場所へ歩いて行く。
だけど、またそこで・・・
「食い逃げだーーー!!!」
紗那・希「「食い逃げ?」」
ある店からそんな大声が聞こえてきたと思えば、黒い影が凄いスピードで俺達の傍にやって来た。
リン「こんなところで奇遇だね、お2人さん!」
紗那「リン君が食い逃げ犯?」
リン「ヤダナァ、ソンナワケナイヨー」
希「そんなわけ・・・あるんだな」
紗那「食い逃げは立派な犯罪だよ」
リン「バレなきゃ大丈夫!!」
紗那「(校則を余裕で破る未来みたい・・・)」
希「店の人・・・出てk(リン「サイナラ―!!」速い・・・・」
目にも止まらぬ速さだ。もうあんな遠くまで行くなんて・・・
さすが〈参加者〉、ただ者じゃないな・・・。
紗那「フフフッ・・・皆、休日でもいつもと変わらないね〜」
希「そう、だな・・・。誰も休んで、ない・・・・」
この世界は、毎日何かしらのトラブルが起こるからな・・・。
皆、休む時なんてないんだろう。
紗那「見てて面白いな〜」
希「面白いか・・・あれ?」
紗那「面白いよ〜。・・・それに今は、ちょっと嬉しい」
希「嬉しい・・・?」
紗那「うん。瑠璃達がイタリアに行っちゃって、私と如月君だけになっちゃったでしょ?
如月君、あんまり喋ってくれないから、私気まずかったの」
希「それは・・・悪かった」
そんな風に思ってたなんて、知らなかった。
これからはちょっとだけ気を付けよう。
紗那「いいの、それが如月君なんだって分かってるから。
だけど今日はいっぱい喋れたから、いっぱい如月君が喋ってくれたから嬉しいの」
谷垣は笑ってそう言う。
嬉しい、か・・・。
やっぱり、俺には分からない。感情なんて呼べるものは、〈アノ時〉にほとんど抜け落ちた。
だけど・・・
ここにいるのは、ツナ達と一緒にいるのは、悪くない・・・。
希「・・・こんな、休日も・・・・たまには、いい、かもな・・・」
その時、彼は微かに・・・ほんの微かに優しい笑みを浮かべた。
紗那「(!え・・・今、笑った?)」
紗那「っ・・・////」
希「?どう、した?」
紗那「なっ、何でもないよ////
ほら、早く行こ!」
希「ああ・・・」
居場所、なんて呼べるものじゃないかもしれない。
俺がいていい場所じゃないかもしれない。
それでも・・・
それでも俺は、ここにいたい。
ツナ達と一緒にいたい・・・。
姉ちゃんみたいに、心を軽く、温かくしてくれる皆といたい。
こういう感情は、一体何て呼ぶんだろうな。
.