白と青と、そして赤。

□言葉の力
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次の朝、予定通り私は男性陣と行動を共にする。
気のせいか、気持ちが軽い。
きっと、昨日の二人の言葉のお陰だと思う。

自信のなかった自分を、少しだけ誇りに感じる事が出来る。
知識がないけれど、それを補う努力と根性を認めてくれた人がいるのだ。

見学班の引率はマルコだった。
元々交渉的な物もしているらしく、昨日もモビーに残っていたのだけれど、

「こっちだよい」

私達の世話までしてくれるようだ。

「カヲルは、モビーが心配でか?」

私を見つけると、隣に来てそう言う。
確かにそれもある。
モビーの声を聞いたのは私だし。

けれど、

「いやいや、マルコ隊長。
サイモンさんは、うちの会社の設計者ですから」

小池部長が余計な事を言う。
この人だって、私の実作業や能力を知ってる訳ではない。
兎に角、自慢げに言うのだけはやめて。

「図面が描けるのか?」

マルコが驚いてる。
でしょうね。

「描けるだけで、設計はしていません」

「ん?」

不思議そうな顔。
だから、

「桐島さんが設計したのとかを、まとめるみたいな?・・・そんな感じです」

パソコンとかCADとか、単語を使わないで説明するのって難しい。
単純に描けないって素直に言えばいいのに、私も見栄っ張りだ。

「すごいな」

「え?」

褒められた。
まさかの伝わらないってヤツ。
周りくどく言ってしまったばかりに。

「そんな事が出来るなら、早く言ってくれよい。
描いて欲しい図面が、山ほどある」

「で、でも、本当に私、船の知識があるわけじゃなくて・・・」

どうやったら伝えられるのか。
やはり自分のダメっぷりを口にするしかないのか、と大きく息を吸うと、

「知識が欲しいんじゃない。
図面を書く才能を持った奴が、欲しいんだよい」

マルコが先に言葉を発した。

「さ・・・才能?」

何だ、そのフレーズ。
魔法の言葉か。

「うちの奴らは、図面に起こすのが苦手な奴らが多い。
だから、その才能が喉から手が出る程欲しい。
単純だろい?」

確かに分かりやすかった。
それに、ちゃんとマルコには伝わっていた。

私は設計の知識を持ってはいない。
数年この仕事をしているから、皆無とは言わないけれど、1から産み出す力はない。

でも、誰かが考えた物を、綺麗にまとめるのは好きだ。
他部署に分かりやすく、的確に伝える為にはどうしたら良いか。
自分なりに考えて、一番ベストな表現を残そうとしている。

それを才能だと言い。
それが欲しいと言われた。

「あ、ありがとうございます。
私で良かったら、お手伝いさせて下さい!」

マルコの言葉も、私を救う。
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