白と青と、そして赤。

□モビーと共に
2ページ/9ページ

『ごめん、無理』

しかし、効力は発揮されないようだ。

「え?」

まだ、雰囲気で挙げていた腕を下ろしていない私。
そう言われて、ゆっくりと下げる。

『ツギハギ補修で何とかなるとこと、そうでないとこがあるんだ』

それには思わず、ボロボロでも頑張っているメリー号の姿を想像してしまった。

『このマスト直すのは、専門の作業場所もいるし、お金もすっこぐかかる』

僕には無理だ、と現実を笑うのだ。
夢のような声が。

「そっか・・・」

私はその場に腰を下ろした。

『ね、お願い』

姿は見えない。
けれど、その声は私の周りで、ユラユラと揺れているようだった。

「お金あるかな・・・」

モビーの財政は知らない。
知っているのは、一人一人はそう大して持っていないという事。

「あ・・・そうか、あった!」

何度も言うが、モビーの姿はない。
けれど、余りによく聞こえる声に、普通に話しかけようとしてしまった。
聞いてとばかりに振り返ると、

「何があったんだ?」

「マルコ!・・隊長!」

違う人がいた。
びっくりしすぎて、名前を叫んでしまった。
慌てて取り繕い、付け足しておく。

「さっきから一人で、何してるんだ?」

「・・・え、見てました?」

「ああ、マストにしがみついてる辺りからな」

ほぼほぼ、全部。
恥ずかしい。

『マルコじゃん』

そして、あの声は再び私の頭だけに共鳴する。

『ねえ、言ってよ。
直さないと、パイナップル引っこ抜くよって!』

「どうした、カヲル?」

二重音声、やめれ。
マルコに聞こえないと思って、言いたい放題なモビー。

『マルコの弱み、教えようか?
そうすれば、すぐ直すって言うかも・・・よい?』

真似するんな。
キャラ変わってないか?
さっきまでの、可愛いキャラはどこへ行った。

「ん?」

ふと、マルコが空を見上げた。
しかも、マストの方。
下から、上に見上げる感じ。

「・・・」

そして、首を傾げながら、マストをパシッと何気に叩く。

「ど、どうしました?」

「いや、何でもないよい」

きっと、無意識に感じとってんだと思う。
何か察知して、無性に柱を叩きたくなったに違いない。
流石は、マルコ。

「で、何があったんだよい?」

私の横に座り、忘れかけていた話題に、しっかり戻しにかかる。
そんなにスタンバられると、返って去りにくいから、その辺絶対わざとだ。

「何か見つけたんだろい?」

『そうそう、何か良いアイデアあったの?』

二人っきりではないようなので、変な緊張はしないけれど、頭が痛かった。

「・・・大金の使い途です」

私が見つけたのは、これだ。
モビーが探してたのは大金の方だけど、私はその逆を思い付いた。

「大金って、ヤギの一億ベリーの事か?」

マルコが知ってるのは、大金の存在の方。
あれがどうしたと口にすると、

『1億キターーーーーーッ!!』

マルコの声に被るように、モビーが叫んだ。
響くのは、私の頭にだけどね。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ