白と青と、そして赤。

□私に分かること
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「サッチがケーキ作ったから、一緒に食べようよ」

こんな可愛い用事で、隊長自ら春田ちゃんを探しに来るなんて。
しかも、ハルタがハルって呼ぶなんて、

「っ!!」

萌える。
ツボすぎる。

「ハルタ隊長、カヲルさんも一緒して良いですよね?」

二人の可愛らしい会話に、思わず見惚れる。
しかし、それも一瞬。

「!」

ハルタが私に視線を移した瞬間、背筋が凍った。
・・・何、あの目!
春田ちゃんに向けられる蕩けるような視線と、全然違うではないか。

そして、

「来る?」

私には、低い声で一言だけ。
何て返して良いのか分からず、

「え・・・いや、私は別に」

辞退する方向に切り替えようとすると、

「来るよね?」

「・・・はい」

負けました。
ブンブンと縦に頷くしか出来ない。

本当にミチさんに懐いてるって言う人と、同じ人?
いや、春田ちゃんに向けた笑顔は、そんな感じだけど。

「フランスパンのくせに、ミルフィーユ作ったんだってさ」

「フランスパン?
えー、よく分かりません」

春田ちゃんが首を傾げていると、気にせず笑顔で行こうと言った。
今、サッチの事さり気なくディスったよね?

「不味かったら、フランスパンに挟んで、海の泡にしちゃえば良いよ」

「不法投棄はダメですってば」

そんなほのぼのした会話でもない。
腹黒王子の発言に気付いてない春田ちゃん。
私だけが、そのギャップにドギマギしている。

何だか、16番隊で良かったなんて思えるから、不思議だ。
隊にも、向き不向きがあるなんてね。

「よう、カヲル」

食堂に行くと、私以外の女子とエースがいた。
サッチが私も見つかって良かったと言ってくれたと言うことは、最初から私も探されていたのかもしれない。

ハルタを見れば、プイッと視線を逸らされた。
こ、こいつ。

そして、ミルフィーユは美味しかった。
ハルタも何も言わないが、完食している。
フランスパンは無事だ。

「知ってるか、カヲル。
もうすぐ無人島が見えて来るぞ」

物足りないと焼きそばを作ってもらったエースが、口に詰め込みながら話す。
話の途中で寝るんじゃないかと、内心ヒヤヒヤする私。

「無人島?
降りるの?」

エースをエース隊長とは呼ぶものの、ついタメ口になってしまった。
それに気付いているのか、春田ちゃんは終始にやけ顔。

「あ、降りるんですか?」

言い直すと、そのままでいいって笑うのだから、男前だ。
見習えハルタ。
これが器の大きさなんだよ。

「海賊の答えは決まってる。
降りるさ、そこに島があるならな!」

くーっ!
ハルタの仕打ちの後だけに、目に染みる。
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