白と青と、そして赤。

□スモールカンパニー
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そして、その日の晩ご飯の後、私達は会議を行うことにした。

『第一回、ワンピース会議』

冒頭で司会の小池部長と野口君が、勝手に名前をつけて、始めますと仕切った。
何か、お宝探索の会議みたいだ。

16人が久しぶりに、全員集まる。
ギリみんなが入れる広さで、誰一人としてこっちのキャラはいない。

私達が何を話すのか、興味というか警戒というか、そういうの無いのだろうか。

すると、

「こんな事が出来るのも、皆さんの人柄と誠実さが認められたお陰です」

小池部長が、嬉しそうに言った。
黒字数値の報告会よりも、何だか機嫌良く無いか。

「今後もピース造船所の社員、協力してこの未だかつて無い不思議な困難に立ち向かっていきましょう!」

選挙活動のような力説。
感極まってるし。
まだ話し合ってもいないのに。

久々に聞いた社名。
当たり前に慣れ親しんだ物だけど、今までピンと来ていなかった。

『ピース造船所』

なんか、この世界にしっくり来てないだろうか。

ピースは確か、戦争を体験した創始者が平和をを込めて名付けたと、入社式の時に聞いている。
そして、造船所。
これも、昔の名残。

30年ほど前までは、漁船や和船を本当に一から設計し、製造していたらしい。
今は、製造法の変化と共に、船に関しては木型までしか造っていない。

そんな会社の私達が、この海賊の世界にトリップした。
なんの縁だろう。

製造開発部が5人。
企画管理に、部材調達、営業、総務、そして製造部門から数人ずつ。
小さな会社が出来そうだと思った。

「先日の船の修理の手伝いは、船長さんからも感謝の言葉を貰ったよ」

これには、内心驚いた。
隣にいた八木に小声で尋ねると、

「ちょっと軋んだ音がした所を、桐島さんが気付いて、みんなで治したんだ」

そう教えてくれた。

「へえ、桐島さんが・・・」

造船業の全盛期に活躍していたおじさん。
時折、当時の話を聞く事もあって、本当に船が好きなんだなと言う印象。

私はと言うと、彼と同じ製造開発に属している。
しかし、特に専門学校を出たとかではなく、派遣で来た臨時の仕事だったのに、いつの間にか正社員になっていただけ。

知識もないくせに、機械を使って製図なんかもする。
図面は読めるけれど、原理なんかは分かってないのだ。

こう言ういい加減な所が、大滝さんから嫌われているのも、本当は分かっている。
前に、

「何で、あの人が正社員になれて、私がなれないんですか」

と、上司に怒っていた。
本当、ただのタイミングだったに過ぎないのに。
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