白と青と、そして赤。

□小さな島の大きな出会い
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「夏冬両方買っとけよ」

服を選んでいると、時折ヒルティが近付いてきて、アドバイスをする。
大滝さんとは趣味が違い過ぎて、選ぶ場所が遠い。

私は動きやすさ重視。
露出もない。
反対に大滝さんは、ナイスバディを強調すべく際どいデザイン。
あの人なら、ナースの服も着れたかもしれない。

「もっと買えよ。
金は気にするな」

「何か、すごい台詞だね」

「一度、言ってみたかったんだよな」

バカな会話で盛り上がる。

「でもさ、申し訳ないな」

「何、遠慮してるんだよ。
親父が買ってこいって言ったんだから、気にせずどーんと買えばいいんだよ」

私が買うはずもない水着を手にして、篭に入れようとするヒルティ。
しかし、そんな冗談よりも、

「親・・・船長が?」

私は彼の言った言葉に、前のめりなってしまった。

「あ、ああ。
今回は親父のポケットマネーだぜ。
女子の分だけどな」

「・・・ホント?」

鳥肌が立った。
全身をブワッと何かが通りすぎた気分だ。

親父はケチだと、マルコが泣いて語ったあのシーンを思い出す。
大事な使い道のあるお金を、いとも簡単に差し出すなんて。

「そっか・・・嬉しいな」

善意を返すことは、私ごときには出来ない。
それに、事情を知ってるのは可笑しいわけで。

みんな、海賊はリッチだとか、太っ腹だとか言って、すごく喜んでいた。
そのイメージを覆すことをしても意味がないことも、分かってはいる。

「嬉しい?」

ヒルティが何故か、私の言葉を拾った。

「え?
うん、嬉しいよ。
親・・・船長からなんでしょ?
だから、すごく嬉しい」

本当の気持ちだ。
嬉しすぎて、親父と言いそうになるのを、何度も耐えるくらい。

「よかったな。
じゃあ、遠慮なんかしないで買えよ」

「・・・うん。ありがと」

ヒルティの笑顔。
きっと、親父に向けられた私の気持ちが伝わったのだろう。
この、親父フリークめ。
私もだけど。

「でも、この水着はいらない」

「ちっ」

楽しい買い物だ。
ヒルティも時間ないくせに、笑っている。

「大滝さんが、呼んでるよ」

「行くかよ。
あいつ、下着売り場にいるんだぞ」

「ヒルティに選んでほしいんじゃない?」

「誰が選ぶか!」

海賊を恐れさせる女。
凄すぎる。

「さっきなんて、エース隊長って、どんな服が好みかって聞かれたけど」

「・・・ハハ」

「ぶっちゃけ、エース隊長狙いでホッとしたかも」

大きな息を吐いている。
自分でなくて安心しているのって、ずるいだろう。

「エース隊長の好み、知ってるの?」

「あん?
お前、興味あんのかよ」

「いや、なんか、ある意味興味しかない」

「どういう意味だよ・・・」
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