白と青と、そして赤。

□目にした青
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「一番跳んだのは?」

「八木だよ」

やはり、彼の身体能力プラス補正に敵う人はいないみたいだ。
しかも、八木はどの種目も殆ど一番だった。

「あいつ、訓練次第で良い海賊になるな」

いやいや、ならないし。
いつの間に、見習い扱いか。

大滝さんが跳んだ。
まさかの好記録。
一番下からは数本上のロープにぶら下がっている。

「ヒルティさーん!
助けてー!怖くて降りれないーー!」

豪快に跳んだ割には、そんなことを吐く。
手を離せば軽々着地出来るだろうに。

「ヒルティ・・・さん、ご指名だよ」

「・・・」

からかうように肘でつつくと、何で俺なんだよと、小声でぼやく。
立候補するクルーは多い。
しかし、

「ヒルティ、行け」

「は、はいっ!」

イゾウのそれには、逆らえるはずもない。
まあ、私的にも彼が行くのが、一番安心出来る気もする。

ヒルティの首に思い切り腕を巻き付けて、ここぞとばかりに抱き付いて降りてくる大滝さん。
幸せそうで何よりだ。

そして、私もスタンバる。
マストに目を向けると、空島に向かっているかのように、空高くそびえていた。

モビーは大きな船だから、マストだって巨大なのだ。
八木は何処を掴んだまでは、知らない。
分かったところで、敵わないし競う対象でもない。

少しだけ準備もかねて、その場でジャンプすると、

「軽い・・・」

この身体測定で、何度も感じた感触をここでも感じる。

そして、

「!!!」

着地と同時に、床を蹴った。
さっきの軽めのとは違う、踏み込んだ力。

「「「すげっ!!!」」」

歓声が上がったのは、自分でもビックリする程の高さに、視界が変わった時。
そして、どこを掴もうか。
悩むくらいに、まだ心に余裕があった。

でも、何処かに掴まらないと落下する。
記録はゼロ、それだけは避けたい。
けど、まだ跳べる気がした。
いや、飛べる・・・そんな気がしたのだ。

「!!!」

もう一度蹴ったのは、床ではない。
着地はしてないから。
多分、あれは宙。
空気でもないのなら、私は宙を蹴ったのだ。

「月歩が出来た・・・マジか」

何度もそれを繰り返し、それが使いこなせる頃には、そう考える余裕も出た。

更には、どこを掴もうか。
掴まなくても、どこまでも行ける。
余裕を遥かに越えた、そんな気持ちも芽生えてきた。

空を飛べることが、こんなにも気持ちがいいものだったなんて。

トリップ補正、万歳!
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