白と青と、そして赤。
□目にした青
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合同訓練の噂は、瞬く間に広がった。
もちろん、話題の中心は、私たちの動きについてだった。
目にも止まらないスピード。
軽やかな身のこなし、高いジャンプ。
主に八木の動きではあったけど、私も桐島さんも、彼らに言わせれば大したもんだったと。
お陰で、一般人扱いだったはずが、再検討対称になってしまった。
これってば、トリップ補正なだけで、別に実力を隠してたとか、本当は一般人ではないとか、そんなんじゃないんだけど。
でも、言えるはずもない。
根拠のない、トリップのお約束なんて。
そう言えば、身長もみんながみんな10センチほど伸びていた。
一斉だから、目の高さが変わった事にだって気付かなかった。
嬉しい補正ではあるけれど、何故ナイスバディの方に働かなかったのか、それには文句がある。
そして、
「調べてほしい。
いや、逆に知りたい」
八木がふと、こんなことを言ったもんだから。
自分達は何処まで早く動けるのか、高く飛べるのか。
変わったのは、それだけなのか。
身の潔白を伝えるためではなく、彼は純粋に自分に起きている事を知りたかったのだと思う。
そして、それは受け入れられた。
『体力測定を行うよい』
と、マルコが言った。
で、今に至る。
次の日の朝から、何が悲しくて大人になってまで、真剣にスポーツテストを行う羽目になるとは。
ご丁寧に、種目は16個も用意されていた。
各隊がそれぞれ、50メートル走やら、砲丸投げやら、シャトルランやら、記録をとる。
どんなことにも、お祭り気分で取り込む。
海賊達はある意味子供だ。
いや、このビーターパン精神こそが、強さの秘訣なのかもしれない。
行く先で、みんなの記録を見せてもらうと、
「マジか」
驚きのオリンピックレコードが続出していた。
トリップ補正は、みんなにも起きていると確信する。
「お、カヲル、オオタキ来たな」
16番隊に行くと、ヒルティが説明係よろしく、立っていた。
イゾウは記録係の隣に座り、監督のように存在している。
「うちは、垂直跳びだ」
「地味・・・」
「言うと思った」
ヒルティの口端が、ピクリと上がる。
「地・・・簡単だ。
あの上のロープ、好きなところに掴まれ。
それが記録になる」
自分でも今、地味言いかけたよね。
敢えては突っ込まずに、彼の指差すマストに続くロープを見上げる。
「ええっ?高くないですか?」
大滝さんが叫ぶ。
一番低くても、2メートルくらいにそれはあって、彼女の驚きも分からなくはない。