キラキラの世界(テニプリ連載)@


□優しい中学生
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「今日、午後から出張するから、レギュラーはミーティング。
他はランニングのみとする」

廊下で竜崎先生に会った私は、伝言を頼まれた相手にそう伝えると、

「分かった。
なら築山、今日はお前は休みだ」

「・・・ウス」

樺地風に返事したのは、せめてもの抵抗だけど、そんな物は彼には伝わるはずもない。

彼、手塚国光は私の返事を確認すると、後は何事もなかったかのように、カバンの中から本を取りだし読み始めた。

昨日、桃に背負われて公園を出た所までは辛うじて記憶があるのだが、気付いた時には手塚に抱えられていた。
あんなに驚いたのは、私のビックリ人生ランキングでも一二を争う。

部活が終わる時間だった為、そのまま部室に運ばれ、リョーマと一緒にあの出来事を話すはめになった。
その間、ずっと眉間に皺を寄せ、一言も語らなかった手塚。
めっちゃ怖かった。

その後、大石の仲裁で何とか帰れるかと思ったら大間違い。
彼のおじさんのいる病院に連行され、手当てを受けることになった。

「病院に行っても、湿布出るだけだからいいよ〜」

などと言ったばかりに、

「章高おじさん!
ガッチガチに固めて!ガッチガチやで!」

と副部長の別の顔を見ることになってしまった。
現在、松葉杖。
これでは、何も出来ない。

休み宣告を受けてしまったから、もう一度病院に行って、せめて石膏だけでも外してもらおうと思う。

それにしても、マネージャーが怪我して休みなんて情けない。

「・・・ごめん」

謝るのは大の苦手だけど、ここで言わねば本当に子供だ。
蚊の鳴くような声なのが、説得力にイマイチ欠けるけど。

「・・・」

それでも聞こえたようだ。
一組で席を列べる私達。
クラスで、学園中で、今誰よりも近い二人。

本に几帳面に栞を挟むと、パタリとそれを閉じた。
そして、体はそのまま、首だけをこっちに向ける。
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