キラキラの世界(テニプリ連載)@


□無意識の技あり
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「バイバイ、築山さん」

「あ、バイバイ」

気持ち含み笑いの隠った別れの挨拶。
別にいい。
これが、私の選んだ道だもの。

誰もが見守るあの中で、私の答えは完璧だった。

「アハハハハーーーッ!落語?にゃんだそれ〜!」

菊丸の大爆笑を皮切りに、昼休みが終わるまで、いや六時間目が終わるまで、楽しんで頂けたようだ。

サッカー部だなんて答えられない。
折角頑張り始めた香山さん。
私のせいで嫌な想いをしてほしくない。

だからと言って、他の部活を言うのも出来なかった。
野球とかバスケとかはルールを知らない。
万が一知っていてそれにしたとしても、変わりはしない予感がした。

中学生でマネージャー経験がある子の方が少ないだろう。
だから、この際運動部なら歓迎となるに違いない。

落研には悪いが、中学生には想像が出来まい。
かくゆう私もなのだから。

マネージャーはマネージャーでも、芸能系マネージャーで。
全くジャンルが違うのも、苦しいけどポイントの一つだった。

「さてと帰ろっ」

部活へ急ぐ足たち。
最後に残ったのは私。
こんなに疲れたのは久し振りとばかりに、体をコキコキと解す。
仕草がおばさんでごめん。

「築山さん」

「び、びっくりした〜!」

いや、その行為を見られたのが恥ずかしいわけではない。
ドアを開け、入ってきたのが手塚だったからだ。
そういえば机の横に、まだ鞄がかけてあった。
彼は生徒会長だ。
やることは沢山あるに違いない。

「今日はすまなかった」

「え?」

彼の突然の謝罪に戸惑う。
昼休みの事を言っているのは分かる。
しかし、あれは誰のせいと言うものではないのだから。

「こちらこそお力になれなくて、すみません」

何なんだこの会話。
OLの気分に戻りそうだ。
部長は部長でも、上司じゃないんだから。

「気にしてないよ。
真面目だな、手塚は」

言ってから、不味いと気付く。
呼び捨てで呼んでしまった。

彼等の呼び方は、コミックスを読んでる気分の延長なわけで、特に深い意味はない。
確かクラスの女子で、彼を手塚呼ばわりする子はいなかったかもしれない。

すると、

「じゃ、また明日。築山」

私の耳が聞き間違いでなかったら、そう言ったのを捉えた。
廊下の向こうに消えていく背中。

心なしか、顔が熱い気がする。
赤面はしない方だけど、心臓はバクバクだ。
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