キラキラの世界(テニプリ連載)@
□転校生、再び
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「築山ミハルです。
よろしくお願いします」
いきなり挨拶から始まるのは、手続きとか展開とか細かく語るのが面倒だったとは言っちゃいけない。
私はあくまでニーの迅速な行動のお陰で、転校生として自己紹介をクラスでさせられている。
そう、あくまで迅速な対応のお陰で。
彼とは、職員室で別れた。
仕事に行くと言っていたが、テニプリ担当者の仕事って何なんだろうか。
別に寂しいと思わない。
少し馬鹿げた夢に若干疲れてきてはいるが、転校自体には慣れている。
中一の時に母の実家から引っ越してきて、そこで一回目。
しばらくして、別の県へ二回目の転校。
だから、高校時代に出身中学で盛り上がる事が出来なかった思い出がある。
見つめる中学生たちの視線。
中身が十代ではない私には、ちと眩しい。
多分、それに乗じることは出来ない。
でも、怯まなかったのは年の功なのだろうか。
「席は手塚!
あの手を挙げた奴の隣な」
先生が指を指す。
その瞬間、教室が騒がしくなった。
しかも、女子の反応が占める。
「あ!」
慌てて、先生の隣から移動。
何故ならば、名前を呼ばれた少年が立ち上がったと思ったら、余って後ろに片付けてあった机を運び始めたのだ。
最初から用意しておくのが、転校生歓迎のお約束だろうが。
「あの、自分で運ぶから・・・」
自分の事くらい、自分でやる。
「!!!」
と、思ったのも束の間。
私は立ち尽くす事となった。
その間、彼は何も言わず、結局椅子まで運んでくれた。
「あ、ありがとう。よろしく」
「ああ」
年上の余裕?
そんなの、早くも無くなりました。
だって、そうでしょう。
目の前に(正確には隣の席に)、あの手塚がいるのだから。
そう、手塚。
・・・名前は何だったっけ?
「手塚国光だ。よろしく」
「そうそう、それそれ」
「・・・」
「いえ、何でもないです」
怖っ!
手塚、怖っ!
あやうくグランド走らされるところだった。
「油断せずいこっ」
小さく呟くと、席に座った。
中学生活が始まる。