キラキラの世界(テニプリ連載)A

□Dear Prince(後編)
1ページ/4ページ

記憶を取り戻した主人公リョーマと、満を持して登場したラスボス幸村。
最後の死闘。

泣いても笑っても、これで勝敗が決まる。
って、泣いたり笑ったりしたのは、私か。

と思い、涙の跡が残ってないか、両手で確認していると、

「ミハル・・・泣いたのか?」

「え?」

いきなりバレた。
隣に手塚が来て、そう言った。

みんな試合に釘付けで、私達のこの会話には気付いていないだろう。

「アハハ・・・ちょっと感動ってやつ?」

恥ずかしながらも、心配されては困るので、事実を告げる。
言った途端、やばいまた泣きそうだ。

「・・・」

手塚の腕が伸びてきたのを、目で追った。
近付く指は、私の頬に触れる。
まるで、さっきニーがそうしたように。
そして、

「一人で泣くな、ミハル」

「・・・手塚」

ほらね、やっぱり涙が溢れてきた。
今日の私は、涙腺が弱すぎるかも。

でも、不思議と嫌じゃない。
流れる度に、何かを一緒に洗い流している気持ちになった。

「・・・手塚」

「何だ?」

頬にまだ触れる手塚の手。
私はそれに自分の手を重ねた。
瞬きをすると、スッと涙が一筋どちらかの手に流れ落ちる。

そして私は、

「ありがとう」

手塚にそう告げた。

思えばこの世界で、前にも一度泣いた事があった。
初めて行った手塚の家で、初めて会った人たちの前で。

異次元、そして自分にはまるで似合わないと思っていたこの眩しい世界。
そこに存在する苦しさに、潰されそうになった時だった。

「お前の力になりたい」

電話の向こうで、手塚が言ってくれたのを思い出す。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ