キラキラの世界(テニプリ連載)A

□光の中(後編)
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「不二、何それ?」

本日、昨日の続き。
試合を終えたメンバーは、言わば今回は見ているだけ。
準備をしている黄金コンビの横で、不二が鞄から取り出した物は、

「バリカンだよ」

いや、分かってるし。

「・・・そうなんだけどね。
何で持ってきたのってこと」

不二には必要ないと思うし、気分転換したくなったとしても、身を呈して止めようと思う。

「くすっ」

バリカンのCMがあったら、ぜひ使いたい笑顔だけれど、答えになってはいない。
まあ、普段からこんな人だと思えば、気にならなくなった私も成長したもんだ。

「風邪はひいていないか?」

「・・・手塚。
あ、うん、大丈夫」

顔を見ると、昨日の事を思い出してしまい、不自然に目をそらしてしまった。
しかし、そんな私の動揺を他所に、

「くちんっ」

手塚が恐ろしくイメージに合わない可愛いくしゃみをした。

「Salute!」

思わず合いの手を入れる。

「・・・」

「・・・」

暫しの沈黙。
無言で手塚が私を見ている。

「今のは海外でよく見られる、くしゃみをした相手に対して掛ける言葉だ」

間に割り込んできたのは、知識豊富なデータマン乾。

「ちなみに今の場合、言われた人間はGrazie、つまりイタリア語でありがとうと返す」

良く出来ました。
思わず拍手していた。

「良い発音だな」

今度は黙っていた手塚が、変なところに感心をし始めた。

「もう一回言ってみ・・・」

「そろそろ始まるよ!」

コートに入る英二と大石を指差す。
こんな始まりでいいのかな、今日。
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