キラキラの世界(テニプリ連載)A

□光の中(前編)
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本日、全国大会二日目。
青学vs氷帝、因縁の対決だ。

手塚と跡部の関東大会を思い出す。
この世界に来て、初めて見た公式戦。
あの時はまだ、そこそこ人間のテニスだった気がする。

そう言えば、あの試合の後に倒れたんだった。
恥ずかしい記憶まで、甦ってしまった。

「・・・」

フェンス越しにコートを見詰める。
いつものように集合時間より早めに来たから、まだ知ってる顔は誰もいない。
準備する人たちが、右往左往しているだけだ。

だいぶ慣れたこの雰囲気。
あんまりまともに試合を見たことがないけれど、前みたいに気分も悪くはならない。

あの頃はこの世界が眩しすぎて、自分がここに居るべきではないと思っていた。
今だって、自分の価値は変わっていないと思う。
強いて言うなら、自分の気持ち。
居られないから、居たいに変化した。

今日行われる試合のように、予想が全くつかない未来。
それを私は見たい。
青学の皆と一緒に。

「そこから、何が見えるんだ?」

ふと掛けられた声。
真横に立った影から、聞こえてきた。
そしてこの声は、

「・・・跡部」

「アーン?何だその間抜けな顔は」

綺麗な顔で毒舌を吐く。
そんなギャップ萌えはいらない。

「準備を見てただけか」

「お坊っちゃまがやったことのない地味な作業だよ。
感謝しなさい」

「・・・うるせえんだよ」

コートを背にして、跡部がフェンスに寄りかかる。
何しに来たんだ俺様は。
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