キラキラの世界(テニプリ連載)A

□めんそーれ リーゼント
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「はあ・・・」

病院からの帰り道、私の足取りは重かった。
別に怪我の治りが悪いとかじゃなく、いやどちらかと言えば治りは早い方みたい。

何だかんだで休養をとって、気付けば明日が全国大会初日。
それを考えただけで、怖い。
何がどうとかは、分からない。

「比嘉戦か・・・」

データマン二人が言うから、六角には悪いけれど私もそんな気がしてしまう。
そういや以前、乾が当たりたくないチームだと言っていたっけ。

「・・・あ」

ぐるぐるといろんな事を考えている私の前方に、腰の曲がったお婆さん。
重い荷物を持って、歩道橋を登ろうとしていた。

「持ちますよ」

さっとその手が、お婆さんが答えるよりも早く荷物を持った。
もちろん、私の言葉でもなければ、私の手でもない。

「へえ」

ちょっと感動。
それが若い男の子だったから。
歳は推定、二十歳前後。
スラッとした身長。
細身の服をピシッと着こなした、後ろ姿イケメン。

二人の歩幅も全然違うのに、気を遣いながら速度を合わせて歩いているのが分かる。
立ち振舞いもイケメンだ。

私は方角が一緒なのも良いことに、そのまま引き寄せられるように後をついて行った。

「ありがとうございました」

「いえ、お安いご用です」

階段を降りる時にはそっと手を添える、立海の柳生を思わせる紳士っぷり。
お婆さんの喜びもさることながら、私的にも良いもん見させてもらった気分だった。

「・・・」

「・・・」

と、視線が重なる。

初めて見たその容姿。
今時黒髪リーゼントで、しかも眼鏡男子。
どこか手塚を感じさせる、無表情のクールな総合イケメン。

ちょっと怖いけれど、人間外見で判断してはいけない良い例だ。
思わず、亜久津のジンジンを思い出す。

「・・・何か用でも?」

その鋭い眼光。
まるで蛇に睨まれたように、私は動けなくなった。
いや、ハブ?
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