キラキラの世界(テニプリ連載)A
□コケシと柳
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「珍しいところで会うな、築山」
「・・・柳」
今はあんまり会いたくない人の、一人に遭遇してしまった。
心の中まで覗かれそうなデータマン。
立海の柳蓮二だ。
部室から闇雲にただ走り、ナイスタイミングで来たバスに飛び乗ったのはいいけれど、行き先の違うバスだったのは後の祭り。
ある意味、誰も追っては来れない目眩ましになってしまった。
まあ、そんなことはしないだろうけど。
知らない景色。
降りたのは、随分と青学から離れてからだった。
家にもすぐに帰る気分になれなくて、近くにあったショッピングモールに入ろうとした時にバッタリと出会した。
相変わらずの糸目で、見えていなさそうなのに、よくもまあ私ごときに気付いたものだ。
「ホント奇遇だね。
じゃ、またね〜」
手を軽く振って、すれ違う。
たんなる顔見知りの他校の生徒。
普通こんなもんだろう。
「待て」
あえなく捕獲。
これじゃダメなのか?
「その怪我はどうした?・・・そのコケシは・・・何だ?」
彼の興味をそそるアイテムを、私は二つも所持していたようだ。
って言うか、乾といいデータマンってどうでもいいことに食い付きすぎ。
「頭ぶっただけ。
コケシは・・・う・・・コケシは」
思い付かない。
すっかり気にもならなくなっていたのは、手にずっと握られたままのコケシ。
確かに私、怪しいかも。