白と青と、そして赤。

□別れと始まり
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モビーの修理が終わった。
何事もなく、ルッチ達はちゃんと仕事してくれて、マジで良かった。

私はあれから、特訓や16番隊での仕事やらで、船にいる事が余りなく、

『カヲル、ありがとね』

「私は、何もしてないよ?」

こうしてモビーと会話するのも、何だか久しぶり。
マストの見張り台に座り、頭に直接語りかけてくる声に答えているのだけれど、ある意味独り言のヤバイ人風。

『ガレーラのみんな、ありがとー!!!』

よほど嬉しいのか、大声で叫んでいるが、

「ハルタに怒られるから・・・」

私と彼にしか聞こえない声。
あんまり煩いと、黒い王子が出て来る。

『ねえ、パウリーを引き抜いてよ』

「・・・何言うかな、君は」

パウリーの腕に惚れ込んでいたのは分かっていたけど、ついに直球で声に出すとは。

「気持ちは分かるけど、彼にもやりたい事だって、居たい場所だってあるでしょ」

普通は知らないパウリー事情。
さり気なく諭そうとすれば、

『僕じゃダメ?
もっと凄い船がいいのかな・・・』

可愛すぎる。
無理無理。
この声に敵うもんなし。

「ダメなわけあるかぁ!
モビーは最高の船だよ!!」

『じゃあ、引き抜いてよー』

「・・・」

そうじゃない。
そう言うんじゃない。

「分かった!
私が代弁してあげるから、パウリーに直接聞いてみなよ」

『ホント?
ありがとう、カヲル!』

まさかの船の告白を、私が代わりにする事になるとは。

そして、

「おーい、カヲルーー!」

下から名前を呼ぶ声。
何事かと覗けば、

「・・・ハルタ」

黒王子だった。
このタイミングで私を呼ぶ。
楽しそうに笑っている。
絶対、モビーの声聞こえてるよ。

『あ、パウリーもいるよ』

「本当だ・・・」

大きく手を振るハルタの横に、彼の顔が見えた。
不思議そうに見上げているのは、私が一人でこんなとこに何故いるのかとか、思ってるんだろうな。

ハルタはきっと、パウリーをさり気なく誘導して来た。
面白がってはいるものの、モビーの気持ちを汲んでの事で、周りに誰もいないのが、その証拠。

「行くか・・・」

見張り台の縁に足を掛けると、パウリーの目が大きく開いた。
危ないとでも言いたげな。

「よっ」

私はそのまま落下するように、一歩前に落ちた。
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