白と青と、そして赤。

□間違い
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太陽がもう直ぐ水平線に沈む。
そうなるまで、私はずっと見ていたわけで、どれくらいここにいたのか。

しかも、絶賛落ち込み中。
夕日の馬鹿野郎と、心の中では叫んでいる。

「夕日のバカヤローーーッ!!」

って、私ではない。
私は海に向かって、砂浜に落ちていた流木に座っている。
これは、景色を遮るように立ちはだかった人の叫びなのだ。

「っくちょー!」

何やら、葛藤している。
この人もうまく行かない事があって、大声を出して発散したいのだろう。
分かるよ、分かる。

「・・・あ、すまん」

私の存在に気付いたらしい。
振り返ったその顔は、気まずそうな色を浮かべていて、返って私の方が申し訳ないと言いたくなる。

しかし、

「はい??」

全然違うリアクションを取ってしまった。
思わず反動で、立ち上がっているし。

「・・・そんなに驚かなくてもいいだろ」

私を驚かしたのはこの人だけれど、勝手に驚いたのは私であって、別に責めるつもりはない。
でも、

「悪かったな、邪魔して・・・」

謝ってくれた。

「す、すみません!
私の方こそ」

両手を振るように、その男の前に突き出した。
私としては誤魔化している。
でも、相手にはきっと、気の弱い人に映ったのではないだろうか。

「叫びたくなる時だって、ありますよね・・・」

取り敢えず肯定し、この場をやり過ごそうとしたのがいけなかったんだと思う。

「そうか?
分かってくれるか?」

ポスンと隣に座られる羽目になった。
男の手は流木を叩き、再度座れと合図してくる。

「俺の名は・・・」

まさかの自己紹介。
どんだけ気さくなんだ、ジャブラさんよ。

おっと、名乗られる前に、私の心は彼の名前を呼んでいた。
まあ、知っている顔と言うか、ワンピースキャラ来た!ってわけで、驚いたのである。

「ジャブラだ。
ここには太極拳の修行で寄った。
まあ、旅人だな」

「旅人・・・」

いきなりの嘘に、感動すら覚えた。
CP 9とは言わなくても、海軍とかその辺を名乗るかなと思っていたのに。

「サイモンカヲルです。
船乗りをしています」

だから、私も本当の事は言わない。
船に乗ってるのは、嘘ではないしね。

「聞いてくれるか?」

「・・・はい」

嫌だとは、言えない。
もう語る気満々じゃん。

そして、何を言うのかと思えば、片思いの話だった。
微妙に記憶に残っているジャブラの設定。
確か、給仕のギャサリンに恋していた。

「何で、俺じゃないんだろうな・・・」

彼女は、ルッチに恋していた。
切ない片想い。
彼はその葛藤で叫んでいたらしい。
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