白と青と、そして赤。
□言葉の力
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「ふう、着いた着いた」
ベッドに腰を下ろす。
部屋には、春田ちゃんとミチさんもいる。
ここは、宿屋の三人部屋。
「造船業が盛んな島がすぐにあるなんて、タイムリーですよね」
「船が主流の世界だから、こんな島も多いのかしら?」
「どっちにしても、モビーが入れる程の港ですから、大きな島ですよね」
修繕の為に急遽寄った島。
この世界の情勢は分からないけれど、三人で適当な会話で盛り上がっていた。
モビーから降りて宿屋に来るまでも、この島の賑わいを肌で感じることが出来、ある意味テンションが高くなっているのだ。
モビーをドックに入れた為、流石に全員が船の中には居られない。
船大工や留守番隊を残し、殆どが宿をとる。
島が大きい分、宿屋も多いし、大きい。
イゾウ、ハルタ、ビスタ隊は同じ宿屋で、女子には嬉しい気遣いだったりする。
「丁度いいから、服とか必要な物も揃えよう」
この前の島の時とは違う。
春田ちゃんは、いろいろ物入りになるのだ。
「カヲルさんは、工場見学に行きます?」
造船所の事だ。
職業柄、男性陣の興味はドックに向いていて、特に年配の桐島さんや小池部長は、
「勉強のために、いろいろ見せて貰いたい」
と交渉していた。
私も一応開発部門の一員なので、ついて行こうと思っている。
半分はミーハーなだけとも言うけど。
「私は行くけど、二人はどうする?」
「私達は特に・・・。
カヲルさんが行くなら、一緒に行っても構いませんけど?」
二人は事務職だ。
その辺の興味はないだろうし、
「怪我するといけないから、来ない方がいいと思うよ」
躓いたり、滑ったり、こっちも心配だ。
「じゃあ、その間に買い物行こうかしら?」
「ミチさん、お願いします!」
私もそれに頷く。
他の三人の女子も、きっと買い物の方に行くだろう。
繁華街は宿屋の目と鼻の先。
工場見学に来るより、安心が出来る。
「ところで、カヲルさんは、船の図面描いた事あるんですか?」
仕事の質問を珍しく春田ちゃんがして来た。
実際、課が違うと、誰がどんな業務をしているなんて、余り知らない。
「・・・まあ、ないとは言わないレベル」
船の知識があって、作図している訳ではない。
パソコンが使えるから、出来るだけのこと。
所詮は中途半端なのだ。
「何言ってるんですか!」
春田ちゃんが突然立ち上がった。
そして、
「図面描いたり、工場で指示したりするカヲルさん、凄く格好良いですよ!」
いつもそう思ってました、と真剣な笑顔。
「そうね。何も知らないって言うけど、男社会で頑張っているカヲルちゃんは、本当に凄いのよ」
ミチさんも優しく笑った。