白と青と、そして赤。

□海が繋げる想い
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無人島バカンス。
最高のシチュエーションが、トリップ集団の心を癒す。

同僚達は海辺ではしゃぎ、私は砂の城を作りながら、チラッとたまに横目で見ていた。

お子様じゃあるまいし。
そう言われたので、必死で大作を作っているところだ。

「お、丁度良いじゃん」

海水が水路を通って流れ込み、砂の城壁の中には自称、池が出来ている。
その中に、ポチャンとスイカを浸けた。
じゃなくて、

「・・・ちょっと、得体の知れないフルーツ入れないでよ」

「冷やす場所なのかと思った」

「・・・」

ムカつく。
顔も見るのもイラッとする、八木だった。

「泳がないのか?気持ち良いぞ」

「いい、もう泳いだから」

「・・・落ちただけだろ?」

そうとも言う。
正確には、全身浸かる前にキャッチしてくれたらしい。
それを想像した瞬間、

「・・・あ、そっか」

「ん?」

自分の中で納得してから、八木に向き合うことにした。
昔から日に焼けていたけど、ここに来て一段と黒くなった顔。

「あんた、これ食べる気?」

海水を手ですくい、チョロチョロとそれにかける。
水でキラキラしても、全く可愛く見えない非トロピカルフルーツ。

「これって食べたら、凄い能力が身につくんだったよな」

どうしようかなーと、腕を組んでニヤニヤしている。

「マルコ隊長やエース隊長も、能力者なんだろ?
俺も食べたら、マルコ隊長みたいに乗せてやろうか?」

八木は悪魔の実を知らない。
みんな同じ能力が身につくわけじゃない事すらも。
それは、まあいい。

「あんたさぁ」

「う、うん?」

「好きなんだよね?」

「は?」

黒い顔がブワッと濃くなったのは、顔色が何かの色に染まったからなのか。
そんなのも読み取れないから、あんまり焼くなよと言ってやりたかった。

そして、

「海、好きでしょ?
・・・って言うか、泳ぐの!」

「そ、そっち?」

何か動揺しているが、暫く考え、大きく息を吸ったかと思えば、

「サーファーだからな、俺!」

親指を立てて、白い歯を見せた。
何か決まらないな、お前。

「・・・食べると、確かに凄い能力が手に入る。
でも、そんなに甘いだけの実じゃないよ」

味の事は言っていない。
甘くないのは、正解かもしれないけど。

八木は、ポカンと口を開けている。
私の言い方にビックリしているのだろう。

「その代償は、海に嫌われること」

自分でも遠回しな表現をしたと思った。
けれど、これが一番突き刺さると思ったのだ。

サーファーの八木にとって、それこそが恐ろしい呪文のように。

「嫌われるって・・・?」

案の定、伝わったのは恐怖のみ。
だから、

「泳げなくなるよ」

結局、分かりやすく解説は必要になるのだ。

「水に入った途端、力が抜けて、もがく事すら出来ないまま海の底に沈んじゃう」

能力者だって、無敵ではない。
その代償は、海で生きるには大きい。

「海に落ちた私をマルコ隊長が助けてくれたって言うけど、もし海中に沈んでしまったら、能力者は助けられない」

二次災害。
一緒に沈んでいくだけだ。
途中でキャッチしてもらえた私は、ギリギリセーフな状態。
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