白と青と、そして赤。

□スモールカンパニー
1ページ/6ページ

「カヲル、脱いでみろ」

医務室から16番隊隊長の部屋に直行したのは良いが、中であぐらかいてキセル吹かしてた人物は、いきなりそう言った。

「はあ?」

ヒルティも同席していた。
彼から見ても、私からしても、この目の前の人物は上司にあたる人で。
けど、お構いなしに、不満な声を上げると、

「本当に完治したのか、見せろって言ってんだ!」

文句は言わせねえとばかりに、偉そうな態度。
偉いんだけどね、隊長だし。

でも、

「嫌に決まってるでしょ!
セクハラで訴えますよ」

善意だとしても、受け取るか。

「傷は残ってねえだろうな?」

「・・・」

迫力もさる事ながら、その質問には即答が出来なかった。

「・・・実は、隊長。
完全には消えなかったそうです」

なのに、ヒルティがバラす。
最後の往診について来た彼は、私とマルコの会話だけは聞いていた。

「これ以上は消えないな・・・すまない」

「全然!前より綺麗なくらいですって!」

謝るマルコに、笑う私。
ずっとそれを気にしていたマルコだけれど、私にしてみれば一週間で完治させた腕を称賛したい。

「傷跡ってわけでもないんです。
まあ、痣・・・みたいな?」

だから、これ以上は消す事が出来なかったのだ。

「痣?
・・・見せてみろ」

「だから、見せませんって!」

伸びて来たイゾウの手を避ける。

「マルコには見せただろうが!」

「しょうがないでしょ、診察なんですから!」

こっちだって、不本意極まりないのに。
何度、マルコの前で肌を晒したか。

胸を隠してはいたけど、その行為すら虚しさ全開だったわ。
マルコは何も言わないけど、きっと隠さなくても見えないからとか思ってたに決まってる。

「隊長・・・こ、この辺で」

モンモンと落ち込む私を、ヒルティが流石に庇ってくれた。

「イゾウ隊長、何処へ?」

立ち上がるイゾウ。

「・・・マルコんとこだ」

「隊長!」

止めようとすると、

「礼を言ってくるだけだ」

振り返らない背中から、トーンの優しくなった声が聞こえて、伸ばした手を下ろした。

「後・・・」

付け足しは、

「マルコに責任とって、嫁に貰ってもらう」

「はあああ??」

近くにあった、座布団を投げると、当たる前にドアが閉まった。

この人の冗談は、心臓に悪い。
何を考えてるのか、全く読めないし。

「カヲル」

座布団を拾うヒルティ。
ここに来るまで、珍しく寡黙だった。
彼も気にしちゃってるのだろう。

「そのさ・・・痣・・・目立つのか?」

ほらね。

「脱ごうか?」

「・・・バカヤロッ!」

海賊なんだけど、こう言うとこは、どうしてこんなに可愛いのだろうか。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ