白と青と、そして赤。
□スモールカンパニー
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「カヲル、脱いでみろ」
医務室から16番隊隊長の部屋に直行したのは良いが、中であぐらかいてキセル吹かしてた人物は、いきなりそう言った。
「はあ?」
ヒルティも同席していた。
彼から見ても、私からしても、この目の前の人物は上司にあたる人で。
けど、お構いなしに、不満な声を上げると、
「本当に完治したのか、見せろって言ってんだ!」
文句は言わせねえとばかりに、偉そうな態度。
偉いんだけどね、隊長だし。
でも、
「嫌に決まってるでしょ!
セクハラで訴えますよ」
善意だとしても、受け取るか。
「傷は残ってねえだろうな?」
「・・・」
迫力もさる事ながら、その質問には即答が出来なかった。
「・・・実は、隊長。
完全には消えなかったそうです」
なのに、ヒルティがバラす。
最後の往診について来た彼は、私とマルコの会話だけは聞いていた。
「これ以上は消えないな・・・すまない」
「全然!前より綺麗なくらいですって!」
謝るマルコに、笑う私。
ずっとそれを気にしていたマルコだけれど、私にしてみれば一週間で完治させた腕を称賛したい。
「傷跡ってわけでもないんです。
まあ、痣・・・みたいな?」
だから、これ以上は消す事が出来なかったのだ。
「痣?
・・・見せてみろ」
「だから、見せませんって!」
伸びて来たイゾウの手を避ける。
「マルコには見せただろうが!」
「しょうがないでしょ、診察なんですから!」
こっちだって、不本意極まりないのに。
何度、マルコの前で肌を晒したか。
胸を隠してはいたけど、その行為すら虚しさ全開だったわ。
マルコは何も言わないけど、きっと隠さなくても見えないからとか思ってたに決まってる。
「隊長・・・こ、この辺で」
モンモンと落ち込む私を、ヒルティが流石に庇ってくれた。
「イゾウ隊長、何処へ?」
立ち上がるイゾウ。
「・・・マルコんとこだ」
「隊長!」
止めようとすると、
「礼を言ってくるだけだ」
振り返らない背中から、トーンの優しくなった声が聞こえて、伸ばした手を下ろした。
「後・・・」
付け足しは、
「マルコに責任とって、嫁に貰ってもらう」
「はあああ??」
近くにあった、座布団を投げると、当たる前にドアが閉まった。
この人の冗談は、心臓に悪い。
何を考えてるのか、全く読めないし。
「カヲル」
座布団を拾うヒルティ。
ここに来るまで、珍しく寡黙だった。
彼も気にしちゃってるのだろう。
「そのさ・・・痣・・・目立つのか?」
ほらね。
「脱ごうか?」
「・・・バカヤロッ!」
海賊なんだけど、こう言うとこは、どうしてこんなに可愛いのだろうか。