白と青と、そして赤。

□何者なのか
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想像して下さい。

「何者だ」

って、言われて何と答えればいいのか。
今まで言われた事なかったけど、言われてみて分かった事がある。

何者でもない場合、答えようがないと言うこと。

聞いて驚け!的な物がない。
答えたところで、それが?・・・なのだ。

自分が革命軍参謀だからって、みんなが名乗りを上げられるほどの肩書き持ってると思うなよ。

「何で答えないの!」

だから、何もないからです。

「何を隠してるの!」

隠す物もないくらい。

「良い加減に・・っ!」

「何もないから、名乗れないの!」

コアラが切れる前に、私が切れた。
捲し立てられる身にもなれ。

「私は、サイモンカヲル!
それ以外は、なんもないわっ!!」

コアラに向かって、人差し指を向け、そう叫んだ。
態度のわりに、中身のない台詞。
一番格好悪いパターンじゃん。

「・・・面白ぇ奴」

目を丸くして固まったコアラとハックとは対照的に、背後のサボが緊張感なく笑い出した。

「だけど、カヲル。
流石にそんな大声は困る」

自分だって、私並みに音を発したくせに。
名前呼ばれて嬉しいから、何となく怒れないけど。

「わっ!」

その動き、見えていたのに回避出来なかった。
サボが近づき、私の腰に手を回したかと思えば、

「一旦、移動するぞ」

耳そばにあの声でそう囁かれて、ピキーンと凍りつくと、地面から私の足が浮いた。
視界には、遠ざかる宿屋の面した裏通り。

「・・・!」

誰か!
ヒルティ!
声が出なかった。

怖いわけじゃない。
サボだから。
予想しなかった展開に、頭も体も追い付かないだけだ。

「サ、サボ!
ど、何処に!」

「やっぱ、俺の名も知ってる・・・」

「いやっ!う、売られる!」

「・・・失礼だな、売らねえよ。
阻止する側だろがっ!」

ああ、そうだった。
混ざってしまった、ごめんなさい。

「俺は兎も角、あいつらの顔まで知ってるお前を、流石に一般人とは思えなくてな」

その口調は、決して威圧的ではなかった。

「お前、海軍が?」

「え?」

そして、やっと理解する。
自分の名乗るべき立場を。

「私は・・・」

「うん?」

「・・・海・・賊・・・かな」

断定は出来ない。
お世話になっているだけなので。

でも、わかり易く名乗るのであれば、これが最善なのだろう。
もっと早く分かっていたら、あの時格好良く答えられたものを。

「海賊・・・?
何処の?」

驚いているのかは、分からない。
続く質問が、淡々としている。

「し・・・白ひげ」

そして、口にする瞬間、唇か震えた。

この名前、重い。

大滝さんも言っていたらしい。
彼女は、どんな気持ちで口にしたのか。
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