白と青と、そして赤。

□振り分け
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「船長の決断は絶対だ。
お前達は受け入れる」

マルコの言葉は、短いけれど深い。
親父が言ってるんだから、仕方ないよい、と言ってるのは、言葉上。

あ、マルコの口調は出てない。
それは、私の耳の都合上。

兎に角、この船にいたいのなら船長に従え。
船長こそが、絶対的存在なのだ。
そうインプットさせるべく、さりげなくスリコミにきた。

そして、案の定ワンピースを知らない我らが小池製造部長は、

「船長の言うことは絶対・・・そうだよな」

素直に洗脳されている。
別に私はそれでいいと思うけど。
私にとっては、当たり前のことだから。

もう心は、最初からどっぷり洗脳を受けているようなもの。
親父こそが海賊。
親父こそが時代だと。

「何か、怖くね?・・・あの人」

独り言のように誰かが言った。

「そう思わないか?」

更に追加されたその言葉は、相槌を求めている風で、ちらりと見てみると、

「八木・・・いたの?」

同期の男性社員、八木潤だった。

「・・・気付いてなかったのかよ」

「うん、全然」

「おい・・・」

目の前のワンピースキャラを目に焼き付ける事に、全神経を注ぎたい。
同僚の誰と誰がいるなんて、今はどうでも良かったのだ。

「あの頭、絶対ヤバい人だよな。
まさに海賊って感じのさ」

「・・・」

否定したい。
マルコは髪型は独特でも、その辺の海賊と括るにはレベルが違うぞ、ボケと。

でも、そんなことしたら、長年隠してきている私のカタギとしての立場が危ぶまれる。

でも、肯定はもっと出来ない。
マルコをディスるなんて、私には無理だっつーの。

「ちょっと聞こえない。
黙ってて!」

マルコが喋ってるから邪魔するな、と言う意味ではない。
それはそれで、気持ちがないわけではないが、何よりも彼がすごい提案をしたからビックリしたのだ。

「16人を一人一人別隊所属にする」

って、言ったよね。
正確には、

「するよい」

だけど。

確かに丁度いい感じには思えるけれど、これにだって意図がある気がする。
バラバラにさせることで、徹底して個々を見張る。
そして、団結しての悪巧みを阻止する。

まあ、勝手な想像だけれど、でもそうに違いない。
マルコの顔が物語っている。

エースやおでん様を迎えた時みたいな、優しい表情とは全く違う。
怪しさ極まりない私達を受け入れたくせに、それは上部だけの歓迎。
分かっているけど、胸がチクリと痛む。

しかし、そんなことよりも、今重要な事は、

「ヤバい人には当たりたくないよ。
って言うか、ヤバくない人いるのかな?」

八木の心配に似ている。
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