白と青と、そして赤。

□海が繋げる想い
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リアンダの葬儀は、水葬。
綺麗にされた彼女は、花いっぱいの棺の中に寝ている。

こんなに美しい死体があるのか。
私は手にした花を、彼女の胸元に供えた。

ナースもクルーも、みんな泣いている。
家族に差はない。
悲しみは、誰が居なくなっても深い。

隊長達が一人一人、彼女に声をかけている。
みんなリアンダが好きだったのが分かる。

親父は、何も言わない。
ただ、大きな掌で、リアンダの頬に触れていた。

私はもう泣いてはいない。
泣いた事は同僚達も分かってはいるだろうけど、敢えて触れないでいてくれる。

そして、

「サッチ・・・」

お別れの儀式の間、彼はずっと姿を見せなかった。
昨日の夜も何処にいたのかは知らないし、聞けるわけなかった。

何処からともなく姿を現したサッチ。

「リアンダ」

名前を呼ぶ、サッチの顔に涙の跡はない。
その様子に、周囲が涙した。

私は二人の姿を目に焼き付ける。

「・・・」

その美しい紅のひかれた唇に、己の唇を合わせたサッチ。
その光景は綺麗で、映画みたいに綺麗で。

『リアンダ』

心で彼女に話しかける。

『悪魔の実なんて食べなくでも、サッチに想いは届いていたよ』

海に流れて行く棺は、遠ざかり、そしてゆっくり沈んでいくのだけれど、

「リアンダ、またな」

海に彼女を託すのは、寂しい事ではない。
サッチとリアンダは、ずっと海で繋がっているから。

海に潜る限り、サッチはリアンダを忘れない。
いや、元より彼女の為に、サッチはいつだって泳げる状態でいようとした。

二人を繋げる。

サッチは海に嫌われる事をしない。
今までも、これからも。


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