白と青と、そして赤。

□海が繋げる想い
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次の日の朝、それは起こった。
生死に関わる事件。

死んだのは、リアンダ。

「まだ、何も分からないんだ」

知らせに来たヒルティの顔が、苦痛で歪んでいる。
彼は名こそ口にはしていなかったが、周囲から聞こえて来たのが、リアンダと言う単語だった。

「悪いが、ここから出ないでいてくれ」

朝食のため、食堂にいた。
クルー達が、バタバタと外に行くのに、私達は止められる。

「いいか、頼んだぞ!!」

ヒルティが男性陣に、怒鳴るように叫ぶと、それが切っ掛けになったように、春田ちゃんが手で顔を覆った。
ミチさんも、女子は続くように泣き出す。

「座ろう」

部長達が気遣って、優しく声をかけ始める。

「サイモン」

「サイモンさん」

私も誰かに呼ばれたが、誰なのか考える思考も機能していない。
もっと、考えなければならない事があると言うのに。

『何があった』

考えようとしても、上手く頭が働かない。
いや、勝手に拒否しているのか。

「・・・」

本当は、考えなくても、教えて貰わなくても。
私は知っている。
それを認めるのが、怖かった。

「サイモン!!」

私は食堂を飛び出した。
さっきの声は、八木。
でも、そう思っただけだった。

クルー達が向かっている方向。
その先には、人だかりが出来ている。
食堂のすぐそばだったなんて。

大男達の隙間を縫うのは簡単で、中央の囲まれた空間にたどり着くと、

「!」

突然、むせ返る臭いに鼻と口を手で押さえた。

「・・・・・・」

そして、目にしたのは、サッチに抱きしめられていたリアンダの姿。
顔色の青さと言ったら、人形のように感じるほど。

抱擁し合う男女。
何だ。
やっぱり上手く行ったんじゃん。

けれど、二人は真っ赤な水溜りの上にいる。
この臭いと、彼女の顔色で、それが血液だと否応なしに分かってしまう。

ただ、マルコも船医もそこにいるのに、誰もリアンダの治療を始めない。
本当は、彼女のものではないのか。

「リ・・・リアンダ?」

彼女を起こせば分かる。
私が名前を口にすると、

「カヲル」

マルコが答えた。
違う、今応えて欲しいのは、

「リアンダ!!!」

叫んだと同時に、私は来た道を駆け出す。
その状況を拒絶したかった。

でも、それよりも別の感情が勝った。

「許さない!」

腰に差してある物に、手を取る。
サッと抜いたのは、イゾウに貰った脇差。

「カヲル!!」

イゾウの顔が見えた瞬間、私は床を蹴り空に飛び上がった。
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