白と青と、そして赤。
□海が繋げる想い
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付き合ってる説を、一生懸命しどろもどろになりながら、否定する。
「結構前からの、付き合いなだけよ。
って、付き合いって、意味違うから!」
やたら言葉数の多い彼女と、
「・・・」
話す間さえ与えてもらえない私。
流石に、暫くして観念したように、
「も、もう・・・無理」
手で顔を覆い、大きく息を吐いた。
そして、
「サッチには・・・い、言わないでね」
彼を好きだと、勝手に白状した。
なんたる可愛さだ。
昼間、サッチに八木との事を問われたが、こう言うリアクションを期待してたのじゃないかと思ったりして。
色恋沙汰には鈍感な私だけど、昼間のサッチのお陰で、リアンダの心を知ることが出来た。
「昔、乗ってた船が海賊船に襲われたの。
その時、助けてくれてのが、白ひげ海賊団だったわ」
サッチとの出会いを語ってくれた。
医療の勉強をする為、故郷を離れていた若き日のリアンダ。
もちろん、今も若くて美人。
人を救う事なく死ぬのだと諦めた瞬間、海中から白い鯨が現れたのだと言う。
その激しい揺れで海に投げ出された彼女は、海賊に殺されず済んだのに、海で溺れ死ぬとはと自分の不運を呪った。
しかし、
「ワカメの妖怪?」
それが手を差し伸べ、海面へと導いてくれたのだ。
フランスパンも濡れると、ただのロン毛になる。
エースを助けた時に、ワカメの妖怪なら私も見た。
「命の恩人なのよ、サッチは」
きっと鮮明に残る、大切な記憶なのだろう。
胸に仕舞うように、手をその鼓動に当てている仕草は、恋する乙女そのもの。
「いつも他人の為に顧みず、あいつの体は傷ばかり」
この言葉を言ってから、
「わ、私が手当てするから、知ってるだけよ!!」
念を押そうとする。
そこまで言わなくても。
「私には、それしか出来ないから・・・」
いや、設定としては十分です。
ナースと隊長の恋、萌える。
この時は、可憐な横顔にうっとりするだけで、私は完全に乙女心の凄さってやつを見誤っていた。
何故って。
彼女は、次の日の例の祭典で、
「1億ベリー出すわ!」
ヤミヤミの実を落札したのだった。
500万だ、505万だと、チマチマしか上がらない値段。
持ち合わせもない上に、無理して上げなくてもゲット出来るかもしれないと言う淡い欲望の中、オークションは難航していた。
「みみっちいわね!」
誰も口に出来るはずもない、八木にとっても夢のような金額を、ポーンと出すのだった。
流石は、堅実な女子。
しこたま貯めていたようで、持てば使ってしまう海賊達が敵うはずもなかった。
「リアンダ・・・何で」
「フフッ、私は要らないなんて、言ってないわよ」
ビックリ顔のサッチと、何処か楽しそうなリアンダが、壇上にいる。
親父がその落札品を賞品のように手渡すと、オークション会場は歓声の声で包まれた。
「リアンダ・・・」
彼女が悪魔の実を手にした理由。
強くなってサッチを守りたいのか、それとも再び海で溺れてサッチに助けて貰いたいのか。
明日にでも聞いてみようと、私は思っていた。