キラキラの世界(テニプリ連載)@


□少年ア○ベ
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「あ、手塚」

改札口から出ると、真正面にある公園のベンチに、綺麗な姿勢で読書する、不自然な人を発見した。

跡部タクシーを断り、自力で帰ってきた私。
手にはお土産の、ドイツのクッキー缶。

「今、帰りか?」

私に気付いた手塚は、本を脇に抱えると声をかけてきた。

「手塚は?」

「・・・俺は、図書館の帰りだ」

「ふーん」

そう言うことに、しておきましょう。
その本、学校の図書室で借りたの知ってるけどね。

「そんで、ヨークシャテリアみたいな名前のが、めっちゃ美味しかったんだよ!」

「・・・そうか、よかったな」

何故か一緒に歩いている私達。
仕方ないので、跡部ッキンガム宮殿での出来事を話す。
何もなかったと言う、ある意味身の潔白も込めて。

「・・・」

風が吹いた瞬間ふと、別れ際に見た跡部の眼を思い出した。
幼い頃のとも、バルコニーで見たのとも、まるで違ったその瞳。

なんだか、吹っ切れたみたいに澄んでいた。

「・・・」

何かした覚えはないけど、何かしてしまったとしたらどうしよう。

「手塚・・・」

思わず、名前を口にしていた。
特に何か言うつもりがなかったけど、言ってしまったからには続けないといけないだろうか。

「余計なことして・・・ごめん」

「何かしたのか?」

「・・・分かんないけど」

「・・・・・」

沈黙が痛い。

こめんなさい。
私が悪うございました。
手塚様、部長様、真田様。
あ、真田は関係ないか。

「大丈夫だ、ミハル」

「・・・え」

手塚の声に反応し、視線を合わせると、彼の横顔が見えた。
ずっと先を見ているように、真っ直ぐに何かを見つめていた。

そして、

「俺は負けないんだろ?
跡部にも、怪我にも」

そう言った。
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