キラキラの世界(テニプリ連載)@
□少年ア○ベ
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「この頃の俺は、弱すぎて話にならなかったな」
最初の部屋に戻ると、前後脈絡のない話を口にした。
どうやら、さっきの写真の話の続きらしい。
「やっぱ最初は、下手だったんだ?」
「あたりめーだろ!」
確かに跡部と言えども、産まれた時から俺様な訳ないか。
「ある意味今の俺は、あの頃作られたかもな」
「?」
何が言いたいのか、良く分からなくて、相槌さえ打てないでいると、
「あーん?
俺様のプレースタイルの事だ」
と教えてくれた。
物分かりが悪くて、すみません。
「相手の弱点を見抜き、それを徹底的に付く」
インサイド&破滅への輪舞曲か。
まだ生では、見たことないけどね。
あ、明日か。
跡部はベランダではなく、バルコニーに出て、一人風に当たっている。
横を向いて、何かを見つめているような、あの写真みたいだ。
面影は残るものの、断然今の方が男前だけど。
「つーか、偉そーにっ!
テニスってそもそも、そう言うもんでしょ?」
私もその横に肩を並べる。
風が心地よかった。
「相手の痛いとこ攻めてポイント。
相手が失敗して自滅してポイント。
テニスって、その繰り返しの紳士なスポーツなんでしょ?」
「・・・全く紳士的に聞こえねえな」
口にしてみると、なんて恐ろしい競技なんだと思えたりして。
「確かにお前の言う通り・・・かもしれねえな」
跡部が笑った。
「後、もう一つ!」
「何だ?」
「偶然!」
自分では予想もしていない、奇跡的アクシデントってやつ。
これもテニスには、ありそうだ。
「バーカ!
俺様レベルになると、偶然なんてもんはねえんだよ!」
さっきの横顔とは明らかに違う。
正面を見据えた瞳に、光が宿る。
「全てが必然だ!」
それでこそ、跡部。
氷帝コールが聞こえかけたよ。
「・・・」
もしかしたら跡部は、手塚との試合を悩んでいたのかもしれない。
怪我をしている相手と、どう向き合ったらいいのか。
少年アトベも俺様跡部も、そうやってずっと自分自身と戦ってきたのだろう。
ただ、あの頃とは違う。
少年アトベは、もう孤独じゃない。
二百人はいすぎだけれど、彼には大切な仲間が出来た。
だから、迷ってなんかいられるはずがない。
「バーカッ!」
「あーん?
何だよ、急に?」
目を丸くする跡部。
「急に言いたくなったの!」
「・・・おい」
今度は目が三角。