キラキラの世界(テニプリ連載)A

□初めてのキス
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「・・・」

喉が渇いて、突然目が覚めた。
体のダルさと体温で、あれが夢ではなかったとだけ思う。

暗い部屋、窓には月の明かりが差し込んでいる。
何時なのかは分からなかったけれど、とても静かだった。

ベッドの近くに椅子があり、その上にペットボトルとタオルが置いてある。
手塚らしい、気の遣いようだ。

その手塚も、流石に部屋の中にはいない。
体を起こして、リビングに出てみても、そこには誰もいなかった。
まだ、ニーは戻ってきていない気がした。

『ピンポーン』

ニーの部屋を確認するのを、躊躇していた時だった。
インターホンがよく響き、続いて私の心臓が同じくらいの音で鳴った気分。

「ニーッ!!」

慌てて玄関に向かう。
心配したんだからと言う言葉を、何度も何度も心で叫ぶ。
それでも、安心の方が大きいのだけれど。

しかし直ぐ様、それが油断なんだと知る。
しかも、時既に遅し。
鍵を解き、ニーが開けるよりも早く、私が開けたドア。

「よう」

そこには、ニーは居なかった。

「っ!!!」

居たのは、名前も知らない危険人物。
下校時に私の腕を掴み、ニーの知り合いだと言って何かを話しに来た、例のあの男だった。

「待てっ!」

顔を見るなり、ドアを閉めようと試みたけれど、奴の手がそれを阻止すべく、ドアを掴んでいる。

これは、もう恐怖以外の何者でもない。
叫び声を挙げるべきなのか、でも声すら出ない。

ドアを離して部屋に逃げ込むのは、対策としてはどうなのだろう。
いろんな事を考えながら、ドアを掴んで開閉攻防戦をしていると、

「聞け!
問題が起きた!
ニーに関係する事なんだ」

その言葉に、一瞬力が負けた。
ドアがもう一度、あの男の顔を映し出すくらいに、大きく開く。
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