新撰組読み物

□北斗星
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「んん?」

隊列の一番前に居るのは、
「あぁ!!野村だ!」

島田の声は、少し離れた陸軍隊に届くほど大きく響く。名前を叫ばれた野村利三郎は、目を真ん丸にして隊列から飛び出してきた。

「副長!島田さん!あぁ、新選組だ!久しぶりだなぁ鉄!」

野村は、田村や玉置と積もった雪を掛け合って遊んでいた市村鉄之助を抱き上げて再会を喜んだ。二人は同郷で、まるで兄弟のように仲が良かった。

「野村ぁ!!」

背後では、隊列を乱された春日が怒号を響かせている。
野村はそれを無視して土方に向き合った。

「副長!俺は近藤先生から言葉を委ねられました。」

近藤の名に、土方の心が大きく騒々めく。野村は、流山で引き立てられる近藤に付いていき、そこで言葉を貰ったのだと言う。

「新選組がある限り、俺は生き続けると、生きろ、と。」

野村に近藤の幻影が重なり、目が眩んだ。
思い出すのは、流山での馬上の堂々とした姿。

生きろ。生きて義を殉せよ。
生涯、己に背かぬのが真の武士。

目が覚める思いで、土方は野村を見ていた。




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