新撰組読み物

□北斗星
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 刺さるような冷たさの空気を大きく吸い込んで、土方はまだ人を排出し続ける戦艦に視線を送った。

そこに居たのは、こんな時にまでキチンと隊列を組んで降りてくる一団であった。
したり顔の大将は、幹部会議で一度見たことがある。たしか、名は春日佐衛門。ならばあの隊は、陸軍隊であろう。
先の幹部会議で土方は額兵隊と陸軍隊を率いて戦う事が決まっている。仙台藩の額兵隊は土方との繋がりも深いが、陸軍隊は話に聞いただけであった。
土方は傍らの島田に小声で言った。

「あの陸軍隊とはどんな隊だ。」
「確か、上野に立て籠もった彰義隊の生き残りだと聞きました。あの大将がひどく気性が荒いとも。」
「上野の兵か…。」
「うーん。土方さんと行動を供にできる幸せな隊はアイツらなのか。」

土方は苦く笑った。足の被弾治療から戻ってから、この男は土方の傍に張りついて離れない。軍議で、新選組は箱館では大鳥の指揮下に置かれると決まったのに誰よりも駄々を捏ねたのは、今や新選組の小隊長である島田だった。
島田は、あからさまな妬心を込めてまじまじと陸軍隊の顔触れを眺め、ふと見覚えのある顔に目を止めた。


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