Original

□欠片たち
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タイトル:芽吹く

 爽やかで、なだらかな女でいたい。もしもあなたが私のことを、好きだと言ってくれなくなっても、忘れることがないように。綺麗な女がいたよなぁと、過去に想いを馳せることができるように。

【解説】
恋愛は終わったら忘れなくてはならないけれど、忘れられたくない。忘れたいけど忘れられない、そんな辛い思いをしてほしくないけれど。「そういえば、私こんな友達いるよ」くらいの感覚で思い出してくれたらいいなっていう、女の人の感情。



タイトル:体温

 鉄の匂いが響き渡る。流れ落ちるような心臓の音が、私を滅茶苦茶にかき乱した。振り上げられた肉塊が、再び私に襲いかかってくる様子が、目の端で見て取れた。抵抗を諦めた犬のように、ぐっと奥歯を噛み締めた。

【解説】
匂いが響き渡る。どこに? そういう詳しい情報を入れないのが私のやり方です。分かりにくくて申し訳ない。「臭い」と表現しなかったのもやり方です。主人公にとっては暴力は日常的なもので、苦しいけど生活の一部。だから、それは別に異常なものではない。「臭い」は「クサイ」とも読めますから。振りあげられるのは、拳なのに、やられる側からすれば肉塊なのです。そう思うことで、相手が人間であり父親であることを排除し、自分は虐待を受けているのではないと思いこむのです。けれど奥歯は噛みしめます。なぜならそれは、肉塊ではなく父親の拳だからです。わかっているのです、本当は。何もかも、気付いているのです。知らないだけなのです。



タイトル:悩(のう)

色んな人と色んなことをして学べばどうにかなるものなのかと思案するけれど、それらをぶつけるには紙面しかなくて困る。それがあるのは凄くありがたい。でも、私は欲深くてズルイので、何でもかんでも欲しがって、いつも空回りして、友人や先生に迷惑をかけるので、もう、時々、突然いなくなりたくなるのです。

【解説】
考え過ぎた人間の話です。自分と言う生き物は? と問われると、一言で言い表せられずに悩む。最近の若者って自分の事を紹介できない、と母親に言われたときに、ふと書いてみた文章です。できないのでもなくしないのでもない。寧ろ、自分を簡単に紹介できるのって凄いけど異常だと思う。人間というよりも自分自身とは分からない生き物で、理解できるのはきっと死に近づいたとき。だからそれまで長いことかけたり、短い時間だったりと様々で、でもきちんと最期には理解する。なのにそれをパッと紹介しろとか、何それ怖いと考え過ぎた、人間の話。要は、にゃん子のことです(笑)




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