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□空の温度
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 アツイ、アツイ、アツイ。弾け飛んだ雨に、アツイ空に、その温度に、ざっと流れた。

【空の温度】

 春はジックリ。出会いとか別れとかでぐちゃぐちゃになって、掴まれるように悲しくなって、一人。
 夏はベッタリ。汗を掻いて走り抱いて、溶けあったらぐちゃぐちゃになって、揺さぶられるように悦んじゃって、身体、二人。
 秋はサッパリ。ひっくり返った背中の真ん中、眺めるだけで悲しくなくて、袖を掴んで息を吐いたら、真っ二つに割られるように顔が落ちちゃって、一人。
 冬はザックリ。刺さった言葉が見事に心臓を貫いて、好きも嫌いも愛してるのよ、偶然ぐらいの心で出会っちゃって浮ついちゃって、キスをしたくて、貴方と二人。
 どこに行っても変わらない。空の温度がそこにあって、ジックリ、ベッタリ、サッパリ、ザックリ、愛しあってくっついて、キスでも愛でも何でもかんでも喰らいつくようにアツくして。手を取ったらそれで負けなの、おしまいおしまい。さよなら物語。だから私の手を取ればいいわ。勝つのは私、負けるのは男たち。私は負けない。絶対に。
「そう」
 なのに流れる、これは何? おどろおどろしい闇色の感情が現れて、隠そうとしたってずるずると剥がされて落ちていく。アツイ。アツくておかしくなるように、もう狂っているけれども、それさえも隠す様に、さぁ、両手を広げて感じて、もっと深く、深く、おかしくなるように! ジックリと見つめたらベッタリと撫でまわして、サッパリと愛を語って、ザックリと捨てて。いらなくなったらはいさよなら。だけどそれをするのは私の方。されるなんてまっぴらごめんよ。泣いたりしないわ、私。
 その癖に、落ちてゆくこれは何? あぁ、アツイ、アツイ、アツイ。弾け飛んだ雨に、アツイ空に、その温度に、ざっと流れた。




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