long story〈怪盗XI〉

□01:出逢い
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コツコツコツコツコツコツ…

最終電車で帰る人はほとんどいないらしく

朝は人で賑わっているこのホームへ向かう階段も私一人…

もちろん話し声が聞こえるはずもなく

自分のヒールの音だけがやけに響く

ホームにつくといつもと同じベンチに座り電車が来るのを待つ

チクタクチクタクチクタク…

遅い…もう1時間くらい待った筈だ

遅れたではすまされない…

早いところ来てほしい

うす暗いホーム、誰もいない無人のホーム…

『(怖すぎだっつぅのぉ!)』

顔には似合わない発言を心の中で叫ぶ

ペタペタペタジャリ…

足音が聞こえる

靴は履いていないのかペタペタという音

『(ヒィッ!!!!!)』

その足音はどんどん私に近ずいてくる

私は恐る恐る後ろを振り返る

『ッ!!!!!』

そこには血まみれの男の子が一人…

「こんばんは、お姉さん」

『こ…んばんは…』

いや、挨拶とかしてる場合じゃないでしょっ

『怪我…してる…の…?』

いや、逃げたいよ…走って逃げたい…マッハで逃げたい

でも…怪我をしている人間を置き去りにするわけにはいかないよね…

一応刑事でもあるし…事件だったらさ…

「あ、これ?大丈夫だよ、これ全部俺の血じゃないし…」

前言撤回…逃げてよろしいかな…

よし、決めた

3、2、1で走って逃げよう…それがいい…というか、それでないとダメだ

え?刑事なら立ち向かえって?

いやいや、私まだまだ新米刑事だからっ!

先輩に付いて行ってるだけのへなちょこ刑事だからっ!

「ねぇ…」

『っ!(ヒィっ!!!!)』

「アンタ俺が怖くないの?」

怖いとも怖すぎるとも

『べつに、血なんて現場でいくらでも見てるから』

何強がってんの私ぃっ!!!!

「アンタ警察?」

『刑事ですが』

「へぇ、刑事なのに俺の事知らないの?」

『何?貴方有名人なの?』

「まぁ、一応ね。怪盗XIって知らない?」

知ってますとも…

『まさか…』

「うん、オレが怪盗XI」

ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!???

『っ!!!!』

「あははっ!驚いてる驚いてるw」

『嘘………』

「嘘じゃないよ。あ、電車が来なかった理由教えてあげようか?」

そして彼は私の耳元で囁いた

(あの電車…赤い箱にしちゃったんだ)
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