アストルティア
□小ネタ
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"家"を抜けて
「………」
魔女の家を離れた今。
カランッ……
とても、寂しいと思っている。
私は今はいわゆる"野良"なのだ。
チームに誘われたりもした。
こっちの生活だって楽しい。
でも、"みんな"がいないのはやっぱり寂しい。
周りにとんでもない迷惑かけて、今に至るというのに。
私は"帰りたい"と望んでいる。
リーダーであるアキラさんは「帰ってこないか」と言ってくれるけれど、今までのようになるには時間がいりそうだ。
素直になれず、意地ばかり張ってしまい、冷たい態度をとってしまう。
でも、このまま終わってしまうのは、とても嫌だ。
深いため息ばかりが出る。
「ユミアさん」
「…先輩」
一つ年上で、先輩と呼び慕うその人は"シャケの切り身"と名乗る。本当の名前は知らない。
「相手はアキラさんだし、そこまで気にする必要もないと思うけどな」
「…………うん」
「俺も素直になれないのは悩みだし、性格直したいけど全然ダメだし。
性格はホント、どうにかしたいよね」
空を仰ぎ見る横顔は日射しを遮るように手をかざす。
微かに浮かぶ笑みは柔らかく、優しい。
先輩に甘えるように抱きつけば、優しく頭を撫でてくれる。
「よしよし」
ぎゅっと手に力がこもる。
「手紙でも、伝えるの難しいかな?
俺から言おうか、とか思ったけどこういうことは、ユミアさん自身から言う方がいいと思うんだ
直接言うんじゃなくていい。ちゃんと、伝えられるといいね」
ただ私は頷くだけだった。
アキラさんに言いたいこと、沢山ある。
エステルを通して送られるレッドローズ。
私はその中にアクアマリンのマリーを混ぜた。
決して伝えてはいけない想いを封じ込めて。
執筆 H26.04.13.日