天使と悪魔

□Wing7
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「え…外出した?」


「はい。本日は休暇を取るとおっしゃって…
団長が自ら休暇を取るなんて…!我々はとても嬉しいです」


「そうですもんね…休みは、天使であっても大事ですからね…」


休み…ですか。

聞きたい話があったのに。


「どこに行ったか…わかりますか?」

「ハルルに行くとか…なんでも、約束があると」

「ありがとうございます、ソディア」

「いえ、もったいなきお言葉です」



ソディアは彼の忠実な側近である。
そんな彼女が嘘なんて吐くはずもないので、フレンはハルルにいるのだろう。
しかし、約束とは…何なのだろう。
ハルルでわざわざ会う約束なんて…

少し、気になった。


「フレン団長にはそのまま3日ぐらいお休みいただきたいです…
いっそ、一週間でも…」


「そうですね。フレンは働きすぎですからね
過労死しちゃいます」



そんな私の言葉に「そうですね」とソディアは返した。



そして私は彼女の言葉に従い、ハルルに降りてきた。
寒空の下、ハルルの樹は立派にあり続ける。
大きな幹から天へと枝を生やし、大地に太い根を張っている。
その幹の下、フレンは今回もまた青と白のコントラストの私服。
本当に他に私服はないのか。他の色の私服はないのか。
黒は…違うけれど、赤とか、黄色とか、着ないのだろうか。


そんなフレンから視線を横に移した時、私は驚いた。


「…………ユー…リ………」


「ん…エステル?」


「……エステリーゼ…様……」


バサリ、とその手の花束が落ちた。
黒い百合の花束の中に場違いな桃色の花が一本。
一方、ユーリの方も花束を持っていてその花束は白の中に菫色の花が一本。

天使と、悪魔。


敵対する者同士。


なぜ、同じ場所で2つ並ぶ墓に花を添えているのか。


「どうして、2人はここに…?」


「…ここには俺達の墓がある」

「ユーリと、フレンのですか?」


「いえ、私の墓は帝都にあります」


ユーリの口が、重々しく開く。
彼の顔を、前髪が隠していて見えない。

「俺と…エステル、お前のだ」


「………私の?」


「ああ。俺は、お前の墓に花を添えにきた。
フレンとは腐れ縁でな。
よく一緒に花を添えに来ていた」





フレンと再会したのも、この墓の前。

再会早々、殺し合いなんて、物騒なもんだ。
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