天使と悪魔
□Wing7
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「………………………」
何度も何度も寝返りを打つ。
…眠れない。
枕を抱いて起き上がる。
外は星空が輝く。下界と同じ空を共有しているのだ。
天使も悪魔も、眠る必要はないが人間だった頃の名残として眠りに就く者は多い。
私もそんな1人だ。
まだ、あの少年…いや、青年の声が耳に木霊している。
彼の言った真実はえエステルにとってとても、とても衝撃的だった。
今までの何かが、壊れていった感覚。喪失感、否、絶望。
そう、これは絶望に近い。でも喪失にも近い。
わからない。
わからない。
これは少女には、とても重すぎる問題だった。
彼女のため息が、白く空気に消える。
思い浮かぶのは黒髪を背に流す彼の姿。
「ユーリ…」
そっと彼の名を小さく呟いた。
返事なんて、あるわけないのに。
わかりきっていることなのに…ただ、何となく呟きたかった。
これはどこか、劇薬のようなものだ。
明日、フレンに聞いてみよう。
一番星は強く輝いていた。
今日は満月だ。