天使と悪魔
□Wing5
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裸の大樹を見上げ、小さく息を吐く。
禁忌に触れていることは自覚している。
それでも、私は望んでいるのだ。
せめて遠くから見つめるだけでもいい。
どうか私のこの恋を摘み取らないでいて。
私は知ったのだ。
彼に近づけること。それだけで幸せだと。
「凛々の明星…それはまさにユーリ・ローウェルという青年を象徴したかのようだった」
「自らの正義の前に散った、ユーリ。願いを目前に散った、ユーリ」
「生まれ変わった今でも、ただ一つの望みを持っている」
知りたい。ユーリの望みを、願いを。
「知りたいかい?お嬢ちゃん」
「知りたいです……………………え?」
無精髭をはやし、ボサボサの髪を上の方でまとめあげた紫の衣の男性がこちらをまっすぐと見つめていた。
自分を指差して首を傾げると、コクコクと頷く。
「み、見えてるんです!?」
「もちろんでしょー。おっさん人間じゃないもん」
「え…じ、じゃあ、幽霊…!?」
「おっさんちゃんと脚あるわよーほらー」
「あ………」
確かにその男性には脚があった。
でも、問題はそこではない。
「ど、どうして見えるんです…?」
そう、そこだ。普通、人間に天使が見えるわけない。
いや、先程人間ではないと言っていたが見た目は人間。見えなくて、当然なのに。
「…………………」
男性は、俯いて黙ってしまった。
言えないこと、なのだろうか。
「………堕天使」