天使と悪魔

□Wing3
2ページ/2ページ




「ユーリ、ユーリ…」



ここなら、会えると思った。
ハルルの樹の上で、彼はいつも気持ちよさそうに寝ていた。
だから、ここに彼がいると思った。



「ユーリぃ…」



「あら、エステル?」



「!!!!!!」



声をする方へと振り向けば、悪魔の女性がそこにいた。
遠目にもとてもきれいな顔立ちがわかる。
体型も、胸が大きくて…羨ましくなった。そっと自分の胸に手を当てる。
小さな感触に、切なくなった。



「ふふ…相変わらず気にしているのね。気にしなくても、彼の心は変わらないのに」



「…え?」



「ユーリも大きい方が好きだと思ったのでしょう。…違う?」



「は、はう…え、と………その……」




彼女が言っていることは図星だった。


男の人は大きな胸が好きだと言う。
フレンも、胸の大きな人とすれ違った時、ホンの一瞬だけそちらに目がいく。
だから男性は胸の大きな女性が好きなのだな、と感じた。




「あの、どうしてユーリのこと…」



「だって、ずっと見ていたもの。貴女が天使である前から」




「え…?あ、あの、教えてください!私は…
!」




「答えは、自分で見つけなくちゃ」




近づいてきた彼女はそれ以上はダメと諭すように唇に人差し指を合わせた。
その悪魔の囁きは、甘美に鼓膜を震わせて、出かけた言葉は溶け込んで消えた。





「諦めないでね、エステル。貴方は、恋を叶えるの」



「………届くのでしょうか。私は天使で、彼は…」




「″前″もそうだったわ。それでも貴方は手を伸ばした。届く、直前だった」




泣きそうな瞳はかくれんぼ。

笑顔の仮面を被ってる。




「あの後、私は大きな罪を犯した」




血色の瞳が鋭く光る。




「私の罪は誰にも、許されない。ギルドの誓いを…またも破った」




「……………っ」





「気づいた時にはもう、全て遅かった」





瞳は光を、喪っていく。
優しく、頭を一撫でされ、去っていった彼女を見つめる。




―――――――私は貴女が羨ましいわ。




渇望の瞳は、色を失っていた。





執筆 H25.8.20.(火)
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ