天使と悪魔

□Wing2
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「…ユーリ…」



ちょっと曇った空。薄暗い道を行く。
全てが沈む光のなかに求めるものは見つからない。




「む?エステル?おぬし、エステルじゃろ」



「え?」




高い、子どもの声なのに老人のようなしゃべり方。
名を呼ばれ、振り返れば金色のおさげをした海賊姿の天使の少女。


でも、それは幼いなりでありながら、私よりもずっと長く生きているような。
私よりもずっとずっと、世界を知っているような…




「えっと…はい……あなたは…?」



「……………おっさんの言う通りじゃ。ウチのことも、忘れてしまったのじゃな」




悲しげな声色で呟いた少女はそっと目を伏せた。
どこか、泣いてるようだった。



「ウチはパティ。よろしくなのじゃ!



でも、そんなことを感じさせないような笑顔で無理に言っているようだった。



「あの、パティさん…」



「パティでいいのじゃ」



「パティ…あの、ごめんなさい」



「何、いいのじゃ。気にするな」




穏やかな表情で、私を慰めるように彼女は言った。
優しく、そして寛容に。



「のう、エステル…」


「あれ、パティちゃん、誰と話してるの?」



それは、一人の人間。
どこにでもいる、普通の人間。この地上で生きる者。



「…古い、友人とじゃ」



「でも、そんな人どこにもいないよ?」




「……………………」





唇をキュッと結ぶ。




「やっぱりパティちゃんって、変わってるね」



そう言って去っていく人間に振り返りもせず、視線ふらも向けず。
ただ、地面を俯いて拳を握っていた。
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