短編集
□魔王と救世主に恋の5題
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私は勇者。
魔王を倒すため、旅をしている。
そして今、私は魔王と共に彼の城にいる。
「エステルー昼飯できたぞー」
「あ、はい。今行きます。」
パタン、と読みかけの本を閉じる。
もちろん、栞は忘れていない。
エステル、とは私のこと。
エステリーゼ、という名が、彼…ユーリには長かったらしく、エステルというあだ名をもらった。
私自身、この名を気に入っている。
ユーリは大魔王である。
私が倒すべき、敵。
そんな私と彼は、この城で共に暮らしている…のである。
「おーい…エステール…飯冷めるぞ。」
「え、あ、ごめんなさい!!」
慌てて私はスプーンを取った。
このままじゃいけないことはわかってる。
でも、私は彼と共にいたいと願ってる。
一緒に逃げれたら、どれだけ幸せだろう…
1.誰も知らない場所なんてこの世界にはないから
だから私たちは逃げられない