NARUTO.1

□e俺だけを見てほしくて
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「なぁ、シカマル」


そう広くも狭くもない部屋に、呼び掛けた俺の声と、紙にペンが走るカリカリという音だけが響く。
俺の呼び掛けに、反応する気配は全くない。


「シカマル」


何とか相手に反応させようと、無視されてもめげずにまた呼び掛ける。
しかし、やはり返事は来ない。


「シカマルー、なぁシカマル」


何度呼び掛けても同じことで、やっぱり無反応。こう何度も何度もシカトされれば、流石の心がひろーい俺でも苛ついてくるのは当たり前。
なるほどな、お前がその気ならこっちだってやってやるよ。こうなったらやけだ、うざったがられても関係ねぇ!反応するまで呼んでやる。


「シカマルー、シカマルシカマル。シーカーマール、シーカー…」
「だぁぁあっ!!さっきから人の耳元でうるっせぇんだよお前は!俺は今報告書書いてんだよ、分かるか!?」
「ちょ、ぅわ…っ!!…いってぇ…!」


ガタガタと椅子を揺らしながらシカマルの手元を覗いていた俺は、突然、おもいっきり机を叩きながら立ち上がったシカマルに驚き、バランスを崩して椅子と共に床へ倒れてしまう。
しかも、運悪く背中を打ち付けたらしく顔を歪める。
頭上から呆れた顔で溜め息を吐くシカマルの姿が目に映った。それから俺の隣にしゃがみこめば、優しく背中を撫でてくれる。
温かいシカマルの手の平はすごく心地いい。


「大丈夫か、キバ」
「あぁ、……ありがと」
「気にすんなよ。…で、何の用だ?」
「…は、何が?」
「さっき俺の名前呼んだろ?」


どんなに忙しい時でも、俺を気遣ってくれるシカマルはすげぇ格好いいなぁ、なんて思っていればふいに尋ねられる。
さっき…?さっきっていつだ?…あぁ、思い出した。


「いや、特に用はねぇんだけど…」
「…ったく、忙しいっつってんのに…」


ただ単に、名前を呼んでいただけだったため苦笑を浮かべると、耳元で二回目のシカマルの溜め息が聞こえる。
…そりゃあ、いろいろと忙しいってことは分かってたけどよ…せっかく任務がない久々の休みなんだぜ?



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